コロナと闘う、医療・経済・感染「3者の視点」
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新型コロナウイルスの感染者が日本で初めて確認されてから、まもなく8か月。終息の兆しは見えず、感染症との闘いは長丁場になることが想定される。社会経済活動を続けながら、感染対策を行う必要がある。現状をどう分析し、どのような対策をとればいいのか。3人の識者に聞いた。(医療部 加納昭彦)
- 重症患者のみ入院 徹底 …東京慈恵医大教授・浦島充佳氏
- PCR・抗原 1日50万件に …群星沖縄臨床研修センター長・徳田安春氏
- 公的検査機関の増設を …日本医師会常任理事・釜萢敏氏
重症患者のみ入院 徹底…東京慈恵医大教授 浦島充佳氏
感染者数が日々報道され、注目されているが、その数に一喜一憂する必要はない。大切なのは、命に関わる重症者数だ。感染対策は、致死率などウイルスの病原性を踏まえ、経済的なコストとのバランスを考える必要がある。
日本では今のところ、病原性は季節性インフルエンザ程度なのかもしれない。季節性インフルエンザでは毎年、国内で少なくとも2000~3000人が死亡している。一方、これまでに国内で判明した新型コロナの死者は1300人程度だ。この致死率では、休業要請など一律に経済活動を制限する感染対策は社会的なコストが大きすぎる。
4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、戦後最大の下落幅だった。こんな状況では企業は倒産するし、失業者も増える。昨年は約2万人だった自殺者も増えるだろう。それでは感染を防げても元も子もない。政府は緊急事態宣言の再発令を極力避けるべきだ。
感染が再び増え始めた6月以降と、緊急事態宣言が発令された頃を比べると、院内感染の規模は小さくなっている。これは第1波の教訓を生かし、リスクの高い場所での感染対策が進んだためだろう。
重症化リスクの比較的少ない一般市民は、3密の回避やマスクの着用などコストのかからない対策の徹底で十分だ。
患者の隔離にも課題がある。現状では、無症状者や軽症者も入院しているが、それではいくらベッドがあっても足りない。政府が8月末に打ち出したように入院するのは症状が重い人に限り、軽症者らは療養用のホテルなどでの隔離を原則にすべきだ。症状が悪化したら入院してもらえばいい。こうした体制を作るため、診療する医療機関とは別に、症状によって隔離先を振り分ける機関を都道府県ごとに作ることを提案したい。
日本を含むアジア地域では、新型コロナによる人口あたりの死者が、欧米に比べて少ない。その理由として、人種差や、過去に新型に似た弱毒のウイルスが流行した結果、新型に対する免疫もある程度ついたとする「交差免疫説」もあるが、解明されていない。科学的な理由が明らかになれば、国民に安心感が生まれる可能性がある。ウイルスの特徴を解明する研究はさらに進めるべきだ。
温度や湿度の低下でウイルスの活動が活発になる冬を迎えると、重症者が増える可能性もある。その際は厳しい対策に切り替える。政府は一度決めた対策に固執せず、その時々の状況に応じ、合理的な感染対策を打ち出す必要がある。

PCR・抗原 1日50万件に…群星沖縄臨床研修センター長 徳田安春氏
普段なら観光客であふれる那覇市の繁華街は今夏、感染拡大のため、「シャッター街」のようだった。安心して経済活動を続けるためには、ウイルスを抑え込むことが重要だ。戦略的な検査体制を構築する必要がある。国内の検査能力は現在、PCR、抗原を合わせて1日約8万6000件。感染拡大の恐れがある冬が来る前に、1日50万件の実施を目指したい。