完了しました

厚生労働省は2日、新型コロナウイルスのワクチンについて、国民全員が無料で接種できるようにする案を、厚生科学審議会の分科会に示し、了承された。新型コロナが社会や経済に与える大きな影響を考慮し、国民への接種を呼びかけ、接種の努力義務を課す方針も盛り込んだ。今月下旬に召集される予定の臨時国会に予防接種法改正案を提出する考えだ。
新型コロナワクチンは、重症化を防ぐ効果が期待されている。2009年の新型インフルエンザの流行では、低所得者を除いて、自己負担があったが、厚労省は今回、費用は国が全額負担し、国民が接種を受けやすくする必要があると判断した。接種の対象は、国内に住む外国人も含まれる。
国がワクチンを確保し、予防接種の実施主体は市町村とする。緊急的な感染拡大を防ぐ「臨時接種」の枠組みで行う。原則として、接種の呼びかけを行い、国民には接種の努力義務を課すことにした。
政府は、ワクチン接種で健康被害が起きた国民への救済制度も整備する。救済額は、現行の制度で最も高水準に設定する。
現在、市町村が日常的に行う定期接種には2種類ある。麻疹やポリオなど症状の重い感染症は、感染拡大予防に主眼を置き、接種を呼びかけ、国民に努力義務を課す。インフルエンザなどは、個人の重症化予防に比重を置いた枠組みで、接種の呼びかけも努力義務もない。
高齢者や持病のある人が新型コロナに感染すると重症化するリスクが高い。政府は、新型コロナの患者の対応にあたる医療従事者や、高齢者、持病のある人を優先接種の対象とする方針を決めている。厚労省は今後、内閣官房と連携し、医療従事者や高齢者らの具体的な範囲について議論を進める。
政府は、来年前半までに国民全員分のワクチンを確保するため、予備費6700億円の活用を決定した。英製薬大手アストラゼネカ、米製薬大手ファイザー、米バイオ企業モデルナが開発を進めるワクチンの供給を受ける調整を進めている。健康被害が起きた場合、民事訴訟などで生じた損失を、ワクチンメーカーに代わり、国が補償する仕組みを講ずることとしている。