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<1>パンデミックでは病床を「有事用」に…新型コロナ【読売新聞社提言】

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入院患者の偏在 緩和を

 全国で新型コロナウイルスの新規感染者数が1日当たり8000人に迫った1月。入院患者の増加が続き、東京都や福岡県では新型コロナ向けの病床使用率が80%を超えた。病床の逼迫ひっぱくにより入院待機者も膨れあがり、自宅や高齢者施設で急変して亡くなるケースも相次いだ。

 こうした緊急時に、米国では各州法で州知事に強制的な措置を取る権限を与えており、病院に病床確保を命じることができる。

 だが、日本の法体系では極めて限られたケースでしか医療機関に指示を出せず、今冬の第3波では協力要請にとどまった。結果的に、都道府県がコロナ患者用に確保できた病床は、第3波のピークを越えた3月3日時点でも約3万床と、全病床(精神病床などを除く)の3・4%にすぎなかった。社会の危機に際しても、通常診療からコロナ対応へ柔軟に切り替えることができない医療提供体制の構造的な課題が顕在化した。

 切り替えが進まなかったのは、行政の権限が及びにくい民間病院が全体の8割を占めるうえ、医師や看護師が少ない中小規模の病院が多く、人手のかかるコロナ患者を受け入れることが難しかったためだ。

 日本の医療提供体制の最大の課題は、諸外国に比べ人口当たりの医師数や看護師数は同水準なのに対し、病院・病床数が過剰なため、医療スタッフが分散していることだ。背景には、戦後の病床政策の歴史がある。

 1961年に日本が誇る「国民皆保険」が実現した。それに伴い急増する医療ニーズに応える形で民間の病院や診療所が増加。同時期に、政府が医療機関の整備について「公」から「民」中心に軸足を移したことで、融資を受けやすくなった診療所の一部が病床を持つ病院へと拡大していった。

 田中角栄首相時代の73年に「老人医療費無料化」が導入されると、少ない医療スタッフで高齢者を受け入れる「老人病院」が急増し、病床増に拍車がかかった。当時、82年まで25年間にわたり日本医師会の会長を務めた武見太郎氏は、保険診療を拒否する「ストライキ」を断行するなどして政府の統制に抵抗していた。政府は過剰になった病床の規制を試みたが、85年の医療法改正により民間病院にも病床規制をかけるまで、30年近くで約100万床が増加した。

不急の診療 制限

 国は現在、将来の人口減社会を見据え、地域医療構想を掲げて病院の再編統合をめざしているが、調整は難航している。

 だが、パンデミック(感染症の世界的大流行)は、災害と並ぶ「有事」である。感染拡大の状況に応じて、医療を有事の体制に迅速に切り替えることが重要だ。

 コロナ患者を診る病院とコロナ以外の通常診療を担う病院にすみ分けを図るなど、「有事用」に病院・病床の役割の見直しが急務になる。必要に応じて、人材も融通しあうべきだ。すぐに生命にかかわらない疾患の診療や手術は、一定程度制限する必要も生じる。こうした有事の計画を、地域で事前に作っておかねばならない。手厚い対応が必要なコロナ患者を受け入れる病院には、政府の財政支援も機を逃さず行うべきだ。

 コロナ禍は、根深い日本医療の病巣をあぶり出した。社会保障の柱の一つである医療は公共財であるにもかかわらず、民間の経営原理が優先され、有事への対応力を備えてこなかった。怠ってきた構造改革を進め、感染症に迅速に対応できる医療提供体制への再構築が求められている。

 ◆日本医師会=医師の医療活動を支援する公益社団法人で、1916年に設立された。会員は医師の5割を占める約17万3000人で、内訳は開業医と勤務医らが約半数ずつ。国の審議会に参画し、診療報酬の改定など、医療政策に大きな影響力をもつ。

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1925895 0 医療・健康 2021/03/21 05:07:00 2021/03/21 06:35:21 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210321-OYT1I50002-T.jpg?type=thumbnail

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