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<3>国はワクチン確保に全力を…新型コロナ【読売新聞社提言】

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接種 国民の理解不可欠

 日本は、世界的なワクチン争奪戦に出遅れた。英オックスフォード大などが集計する「アワー・ワールド・イン・データ」(18日時点)によると、100人当たりのワクチン接種回数では、日本は経済協力開発機構(OECD)37か国中で最下位の0・4回。トップはイスラエルの111・3回で、チリ42・5回、英国40・7回と続く。日本は世界平均5・3回からも大差がついている。このままでは社会経済活動の再開が国際社会に大きく遅れ、「ワクチン敗戦」になりかねない。

新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける医療従事者(3日、千葉大病院で)
新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける医療従事者(3日、千葉大病院で)

 厚生労働省は昨年夏頃から、米製薬大手ファイザーなどと交渉を始めた。しかし、日本はプライバシー保護の観点から、製薬会社が欲しがる接種効果などの個人データを提供できない事情もあり、交渉は製薬会社ペースで進んだ。今年1月にファイザーと正式契約したが、契約条項の詰めの甘さがたたり、ワクチンの安定供給は見通せていない。

 欧州連合(EU)が域内でのワクチン確保を優先して輸出規制に乗り出す一方で、中国は国産ワクチンを途上国に提供して存在感を高めるなど、ワクチンは国益を左右する存在となっている。国を挙げてワクチン確保に取り組むべきだ。

 ワクチン供給が見通せないあおりで、全国の自治体は接種スケジュールを固めることができないでいる。

 ワクチン接種は、医療従事者(約470万人)に続き、高齢者(約3600万人)や基礎疾患のある人(約1030万人)、高齢者施設従事者(約200万人)、最後にそれ以外の一般住民という順番で行われる。

 政府は高齢者分のワクチンを全自治体に6月末までに配送すると表明したものの、それ以降のスケジュールはあいまいなままだ。政府は、供給が大幅に増える時期を5月以降と見込んでおり、一般向けの接種は今夏以降にずれ込む公算が大きくなっている。

 政府が購入契約を結んだワクチンでは、英アストラゼネカと米モデルナも国内で承認申請している。政府は両社の審査を進め、全自治体にワクチンが十分行き渡るような供給計画を一刻も早く示す必要がある。

 ワクチン接種はコロナ禍を収束させる切り札で、ほぼ全ての国民(16歳以上)を対象にした国家プロジェクトだ。ワクチン確保や接種体制の整備などで1兆6000億円もの予算を確保している。日本は過去にワクチンの副反応が社会問題化した経緯もあり、接種には慎重な国民性とされる。政府は接種の利益とともに、副反応の情報を適切に公開し、国民が安心して接種できるよう信頼を得なければならない。自治体ごとのほか、職場などでも接種できる柔軟な体制を検討し、接種を円滑に進めてほしい。

 コロナ禍で国民の生活は大きな制約を受けた。ワクチン接種を進めた先にどんな社会生活があり得るのか、政府が具体的な行動基準を示すことも必要だ。

 重症化リスクの高い人への接種が進めば、重症者や死亡者を減らせる可能性がある。大勢に免疫がついて流行が収まる「集団免疫」の獲得には、国民の7割以上が接種する必要があるとされる。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、流行の収束には「2~3年かかる」との見通しを示している。

 接種が先行する海外では、社会経済活動の正常化に向け、ワクチン接種により行動制限を緩和する「ワクチン証明書」などを活用する議論が進む。

 世界最速のペースで接種が進むイスラエルでは、証明書の提示で映画館や飲食店の利用が半年間は可能になるなど、生活に浸透しつつある。EUでも、月内にも域内の移動の自由を認める証明書発行で合意に至る見通しだ。米疾病対策センター(CDC)も、接種を完了した人同士ならマスクを着用せず少人数で集まれるとする新指針を発表した。

 政府は、現時点では接種できない人への配慮から国内での証明書導入には否定的だが、国際的な動きに後れをとってはならない。どのような基準で社会経済活動を進めるか、国内でも早急に議論を始めるべきだ。

生産力強化 国家戦略に

 コロナ禍は、国内のワクチン開発という「急所」を直撃した。日本は1970年頃まで高い技術力を誇っていたが、集団接種の副反応などが相次いで社会問題化。国や企業はリスクを嫌い、ワクチン産業は急速に衰退した。

 一方、海外では、製薬大手が統廃合などで企業規模を拡大し、新興企業も成長。新型コロナに対しては、大手と新興企業が連携し、遺伝子を活用した前例のないワクチンなどを開発した。中国での流行開始から1年弱で実用化するスピード感に大きな注目が集まった。

 現在、国内外では米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカなどのワクチンを使った接種が始まり、ロシアや中国、インドも独自にワクチンを開発。アジアやアフリカ、南米などに供給している。これに対し、国内では数種類のワクチンが開発中ではあるものの、臨床試験の最終段階に入ったものはまだない。

 将来を見据えると、国内でワクチンを安定的に供給し、品質を管理できるようにすることは、国民の生命と安全を守るために不可欠だ。長期戦の様相を見せるコロナとの闘いを機に国内での開発・生産力強化を国家戦略に位置付け、ワクチン産業の底上げが急務だ。

 今後、新たな変異ウイルスの登場で、現在のワクチンが効果を失い、新しいワクチンが必要になる恐れがある。来年以降も毎年のように接種が必要になる可能性もあり、供給が不安定な海外に頼る状況を早く脱しなければならない。

 自民党は2月、「ワクチンの確保は世界各国の最大の関心事であり、開発力は外交力や安全保障の観点からも重要だ」と提言。国産ワクチンが臨床試験段階である現状を踏まえ、「研究開発基盤を整備すべきだ」と指摘した。厚労省も2020年度の補正予算で、約3200億円を新型コロナワクチンの開発や生産体制の整備にあてた。効果が高く、安全性の高いワクチンを開発できれば、市場は世界規模だ。神戸や福島など産学連携の産業集積地を活用し、医療新興企業も含めた産業育成を急ぎたい。

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1925910 0 医療・健康 2021/03/21 05:05:00 2021/03/21 06:36:03 新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける千葉大病院の医療従事者。医療従事者向けの優先接種が始まった(3日午後3時46分、千葉市中央区の千葉大病院で)=菅野靖撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210321-OYT1I50018-T.jpg?type=thumbnail

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