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京都大病院は8日、新型コロナウイルスに感染して重い肺障害を起こした関西地方の女性に、生体肺移植を実施したと発表した。手術は7日に行われ、女性の夫と息子の肺の一部を移植した。手術は無事終了し、夫と息子の経過も良好という。京大病院によると、コロナ患者に対する生体肺移植は世界で初めてのケースといい、「対象となる患者は限定されるが、重篤な肺障害を起こした患者にとって、生体肺移植は希望のある治療法となりうる」としている。
発表では、女性は昨年末、新型コロナに感染し、呼吸状態が悪化。関西地区の病院に入院し、
その後、家族から臓器提供の申し出があり、夫の左肺の一部と息子の右肺の一部をそれぞれ女性に移植することにした。
4月5日にECMOを付けた状態の女性を京大病院に搬送、7日に手術を行った。手術は10時間57分で終了した。
オンラインで記者会見した伊達洋至教授らによると、女性は手術後、集中治療室(ICU)に移り、8日朝には呼びかけに目を開ける反応があった。人工呼吸器は付けているが、ECMOは取り外された。
術後の画像検査では、移植した夫と息子の肺は機能しているという。女性は今後2か月で退院できる見通しで、3か月で社会復帰が可能とみられる。
伊達教授は「女性はECMOを長く付けていたため肺が出血しやすい状態だった。このため移植後の止血に数時間を要した」と話した。女性の夫、息子とも、移植した肺が機能していると聞いて、とても喜んでいるという。
京大病院によると、肺障害を起こしたコロナ患者への肺移植は、中国や欧米で20~40例実施されたとみられるが、いずれも脳死肺移植だった。京大病院も脳死肺移植を検討したが、国内では肺移植を希望する患者の平均待機期間が約800日と長いため、生体肺移植に踏み切った。
京大病院は「生体肺移植は、肺以外に臓器障害のない65歳未満の患者が対象。ECMO管理のコロナ患者の多くは、基礎疾患があったり、肺以外の臓器に障害があったりすることが多く、生体肺移植の対象となる患者数は限定されると思われる」と説明している。
湯沢賢治・日本移植学会副理事長の話「新型コロナウイルス感染症は、重症化すると肺の機能が戻らないことが多く、肺移植は唯一の有効な治療法だと考えられる。日本で脳死移植を受ける場合は長い待機期間が必要で、今回は生体肺移植しかない状況だったのだろう」