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マスク外して歩く入所者、防護服なしで立ち入る職員も…神戸の高齢者施設「機能不全」

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 大阪府や兵庫県で4月以降、新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)が発生した高齢者施設で、入所者が入院できないまま死亡する例が目立っている。神戸市長田区の介護老人保健施設「サニーヒル」(定員150人)では死亡した入所者31人の9割が施設内で亡くなった。現場で一体何があったのか。施設支援にあたった医師が読売新聞の取材に応じ、機能不全に陥っていた実態を証言した。(大背戸将、諏訪智史)

職員次々感染

コロナへの備えの必要性を訴えるDMATの若井医師(大阪市中央区で)=長沖真未撮影
コロナへの備えの必要性を訴えるDMATの若井医師(大阪市中央区で)=長沖真未撮影

 「マンパワー不足で、施設内の指揮系統が働いていなかった」

 そう語るのは、国立病院機構本部DMAT(災害派遣医療チーム)の事務局次長、若井聡智あきのり医師(53)。

 DMATは災害発生時に救命活動などを行う組織で、現在は新型コロナのクラスターが発生した施設に赴き、感染対策などで職員に助言を行っている。

 サニーヒルでは最初の感染者が出た4月14日に約130人の入所者と約120人の職員がおり、これまでに入所者は7割を超える101人、職員は約3割、37人の計138人が感染。若井医師が施設に入ったのは4月27日で感染者は既に計100人を超えていた。

 「かなりの職員が感染で休み、指揮する立場の幹部も現場に入らないといけない状況。こちらが『この患者はどこにいますか?』と聞いてもすぐわからないこともあった。こうした施設は大半が普段からギリギリの人数で、今回は外からの応援もなく職員が休まず頑張るしかなかった」

 感染リスクの高い場所と低い場所を分ける「ゾーニング(区画分け)」でも、感染リスクが高い「レッドゾーン」に職員が防護服なしで立ち入る場面もあったという。

 「最初は、防護服の着方や着る場所が浸透していなかったようだ。現場は忙しく、みんなで一度集まるといった情報共有の場を作りにくい課題があった」

優先順位低く

 亡くなったのは入所者31人。うち入院できたのは3人にとどまる。4月下旬は神戸市内で入院調整中の感染者が連日1400人以上に上り、300に満たないコロナ病床はほぼ連日満床。サニーヒルには元々、医師3人と看護師16人が常勤し、市保健所は入院の優先順位は低いと判断し、結果的に施設内で次々と死者が出た。

 「職員は『入院していれば死ななくてもよかった』と感じ、心痛はかなり大きいだろうと思った。また通常なら亡くなった入所者は葬儀業者が施設に入って外まで運んでくれるが、今回は業者が入ってくれず、看護師らが納棺までして玄関まで運ぶということもあり、心も体も疲れ切っていた」

事前の備えを

 感染拡大の背景には、高齢者施設特有の事情も影響していた。

 「入所者の半数ほどの約60人が認知症で、マスクを外してフロア中を行き来したり、レッドゾーンに出入りしたりしていた。高齢の入所者は持病で日常的に発熱がある人も多く、感染の兆候をつかむことが難しかった面もある。また感染力の強い変異ウイルスで、寝たきりの患者を抱きかかえるなどして献身的にケアする職員にも次々にうつった」

 入所者が施設内で亡くなるような事態を防ぐためにどうすればいいか。若井医師は「自治体がコロナ病床を増やしていくことが大前提」とした上で、施設にもコロナへの備えを求めた。

 「感染が発生したらゾーニングをどうするか決めておく。消毒液などを備蓄し、防護服も着方を練習しておく。感染を想定した訓練をしておくことが必要だ」

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使い方
2070361 0 医療・健康 2021/05/22 13:32:00 2021/05/22 20:46:34 インタビューに答えるDMAT事務局次長の若井聡智医師(12日、大阪市中央区で)=長沖真未撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210522-OYT1I50036-T.jpg?type=thumbnail

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