夏のランニングには細心の注意を

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 今年の夏はほんとうに暑く、体調の管理には、みなさん、気をつけられているのではないでしょうか。

 私も、ランニングに行くときには朝早く起きて、太陽が高くなってしまう前に走り終えるように工夫します。

 それでも暑いので、夏のランニングには、細心の注意を払います。

 まず、通気性がよくて、乾きやすいシャツを着ることです。汗をかいても、通気性がよければ風が通って涼しくなります。

 公園で水道の蛇口があると、お水を飲んで、それから水でシャツを湿らせます。 () れたシャツで走ることで、気化熱がうばわれ、快適になります。

 走るコースも、できるだけ日陰にします。時には、公園の木立の中をぐるぐると何周も回ることもあります。

  (ちょう) の中には、決まった道を飛んでいくという性質を持ったものがあります。黒い色のアゲハ類などがそうです。そのような決まった道を、「蝶道」といいます。

 夏の暑い日に、公園の木立の中の涼しいところを選んで走っていると、しばしば、飛んでいる蝶に遭遇します。

 「お~い、君も、涼しい道を選んで飛んでいるのかい?」と思わず声をかけたくなります。

 実際には、蝶道は、暗いところばかりを選んでいるわけではなくて、日照条件や、吸蜜できる花、卵を産み付けられる「食草」の所在など、さまざまな条件に基づいてかたちづくられるようです。

蝶を身近に感じる季節

 いずれにせよ、夏に木立の中を走ることのよろこびは、蝶を身近に感じることです。ときには、クヌギの木にタテハチョウが飛来している時もあります。カナブンやスズメバチと競うように蜜を吸っているのを見ると、 可憐(かれん) に見える蝶もずいぶんとたくましいなあと思います。

 シャツに水をかけたり、日の当たらないところを選んで走ったり、さまざまな工夫をしていても、どうしても暑くなってしまうことがあります。

 そのような時は、立ち止まってしばらく休みます。すると、運動による体温の上昇がとまって、涼しくなるのです。可能ならば日陰で休むのが望ましいのですが、日が差していても、そのようにして時々立ち止まると体温も下がり、体の休息にもなってまた元気に走ることができます。

ペースは「ゆっくりめ」がコツ

 夏の時期のランニングは、ペース設定を「ゆっくりめ」にすることがコツなのです。そうすることで、無理せずに走ることができます。私の場合、だいたい普段の1.2倍くらい時間をかけて走るくらいがちょうどよいです。

 もちろん、以上の「夏のランニング対策」は、長年のうちに私が工夫してきた、あくまでも私に合った方法なので、読者のみなさんは決して無理をせずに夏の運動をたのしんでいただきたいと思います。私自身も、いろいろ工夫してもあまりにも暑い時には、途中で走るのをやめてしまいます。最初から、「今日はよそう」とランニングに行かないこともあります。

 夏のランニングは、「無理せず、余裕をもって」が鉄則。体を動かすのが大切だとは言っても、熱中症になってしまっては、元も子もありません。私自身は仕事の都合でそうすることがなかなか難しいのですが、日が落ちた後、夜になって涼しくなってから走るという方も多いようです。

 ところで、夏に走っていて、案外涼しさを感じるのは、空を見上げたときです。

 特に、もくもくと雲がわきあがっているような光景を見ると、ああ夏だなあ、さわやかだなあと感じて気分が一新されます。

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 先日、長野県大町市の郊外にある木崎湖のほとりに研究室の合宿で行った際も、ランニングの途中で見事な雲を目撃しました。

 雲を見ると夏らしさを感じ、また涼しさを感じるのは、子どもの頃からの経験の積み重ねなのでしょう。雲が出るとやがて夕立がきて、気温が下がることもあり、そんな期待が雲の景色を涼しげに感じさせるように思います。

気分転換によるメリハリも大切

 ランニングの途中で立ち止まり、風景をしばらく眺めることは、とてもおすすめの気分転換です。脳にとって何よりも大切なのは「メリハリ」。脳は、同じ状態が続くと疲れてしまいます。ランニングをがんばっている、という状態を一度解除して、力を抜き、呼吸を整えながら周囲の景色を見る。そのような「ひとやすみ」の時間は、ランニングの中のとても魅力的な「句読点」になります。そのような句読点の中で、雲を見上げるのはほんとうに最高です。

 地上をちょこまかと走っている自分が小さく感じられるような、大自然の営み。しかし、その大自然の中で、自分がたしかに息づいていることの (よろこ) び。

 ふたたび季節がめぐり、青空の中に雲を見ることができたことの感動。やがて秋になり、冬になり、寒くなるだろうという予感のたのしさ。

 ただ立ち止まって、雲を見上げているという短い時間の中に、さまざまな思いがこみ上げてくるのです。

青空に浮かぶ雲を見上げよう

 夏を体感するためにも、一度くらいは青空の中の雲を見上げた方がよい。

 小学校の頃から、雲に、夏の思いを託してきたという方は多いのではないでしょうか。ひょっとしたら、読者の中には、この夏、どこかで私と同じ雲を見上げていた方もいらっしゃったかもしれません。

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茂木 健一郎  (もぎ けんいちろう) 脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。近著に、「成功脳と失敗脳」(総合法令出版)。

133416 1 世界を脳から読み解く 2018/08/13 16:00:00 2019/01/30 17:08:03 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180813/20180813-118-OYTPI50063-L.jpg?type=thumbnail

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