巨人阪神戦、33年の時を超える

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 先日、ほんとうに久しぶりに、阪神甲子園球場に野球を見に行きました。

 しかも、なんと伝統の阪神対巨人の試合を観戦に行ったのです!

阪神応援席で巨人グッズを持つ22歳

 それにしても前に来たのは随分と昔で、どれくらいかというと、なんと、前回は1985年だったのです!

 そう、1985年と言えば、阪神タイガースが21年ぶりにセ・リーグで優勝を決めた、あの伝説の年です。

 甲子園球場における巨人戦において、槙原寛己投手から、ランディ・バース選手、掛布雅之選手、岡田彰布選手がバックスクリーン付近にホームランを3連発した、あの「 バックスクリーン3連発 」の年であります。

 まさにその年に、シリーズも終盤、阪神の優勝がほぼ決まった段階で、私は甲子園球場に阪神と巨人の試合を見にいったのです。

 外野席、阪神の応援団が大挙している、ライト側の応援席に、私は座っていました。しかも、今思い出しても、なぜそんなことをしたのかと思うのですが、なぜか、私は巨人の応援グッズを持参してしまっていたのです。

 21年ぶりのリーグ優勝を目前として、ものすごく盛り上がっている阪神応援団。その中に一人だけ、巨人のグッズを間違って持ってしまっている私。

 私は、22歳でした。今考えると、若いというか、かわいい、という感じがしますね。

 幸い、阪神ファンのみなさん、優勝目前という心の余裕もあってか、「ああ、なんか間違っているのが紛れこんでいるけど、まあ、いいや」という感じで私のことを放置しておいてくれました。

 それでも、あの時、外野スタンドから見た阪神の勢いというか、阪神ファンの気合というか、その熱気は忘れられず、以来、甲子園球場の阪神と巨人の試合というと、「熱きマグマ!」というイメージを持っていたわけです。

礼儀正しく、洗練された虎ファン…

 あれから、なんと、33年!

 再びの、甲子園球場での、阪神巨人戦!

 週末の、午後早く始まるデーゲームです。

 いやあ、今日はどうなるんだろう、と思って内野席に座った私は、なんだか拍子抜けしてしまいました。

 阪神ファンの方が、以前に比べると、ずいぶん礼儀正しくなっていらっしゃるのです。良く言えば洗練されている。ちょっと野性味が減っている感じもする。

 確か、以前訪れた時は、一つひとつのプレーに厳しい 野次(やじ) が飛んでいたと思うのですが、今回はそんなことはありませんでした。

 しかも、女性ファンがとても増えていて、子供連れも多く、私の記憶の中の阪神甲子園球場に比べると、女性、ファミリー層が多くなっているように思われたのです。

 もちろん、ファンの幅が広がることは、野球界にとって、そして阪神にとってよろこばしいことのはずです。

 ただ、昔からプロ野球を見てきたオールドファンとしては、あの、下手なプレーをするとドヤされそうな雰囲気といいましょうか、一触即発の空気もまた懐かしいなあと思ってしまったのでした。

意外だった菅野投手の「身体の大きさ」

 さて、肝心な試合の方ですが、なんといっても (うれ) しかったのは、菅野智之投手の投球を間近で見ることができたことです。

 最優秀防御率、最多勝利、最多奪三振などの数々のタイトルをとり、先発完投型の投手に与えられる最高の賞である沢村賞にも輝いている菅野投手。

 やはり、野球は球場で、生で見るのが一番。菅野投手の投球に目が (くぎ) 付けでした。現場で見ないとわからないことがたくさんありました。

 その抜群の安定感が印象的だったのですが、意外に思ったのが「身体の大きさ」。

 菅野投手は、もちろんスリムな体形なのですが、ほっそりというよりは、肉がつくべきところにあるという感じで、膨らんでいる見た目なのが強烈に心に響いてきました。

 このように、筋肉に包まれた身体だから、あれだけの投球ができるのだな。

 阪神ファンの応援の昔に比べてお行儀が良いことなどすっかり忘れてしまって、菅野投手の投球に夢中でした。

アウェーでも、ホームでも

 試合は、菅野投手の好投もあって、巨人が快勝。

 印象的だったのが、巨人ファンの方々の応援ぶりです。

 レフトスタンドの、本当に小さな区画に集まった、巨人の応援団の方々。圧倒的にアウェーな空気をもろともせず、懸命に応援を続けていました。

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 試合終了後も、阪神ファンの方々が次々と席を立たれる中、いつまでも、夕暮れの甲子園球場で応援歌を奏で、勝利を祝っていました。

 その様子を見て、いいなあ、と思いました。

 アウェーでも、ホームでも、自分の好きなチームのことを応援する。その気持ち、伝わってきます。

 振り返れば、33年前、私は、バックスクリーン3連発の伝説の年に、ライトスタンドで、阪神ファンに囲まれながら、小さく、控えめに、巨人グッズを振って応援していました。

 今でも、この時の話をすると、大阪の方に大笑いされるのですが、私なりに、巨人を応援していたのです。

 当時、巨人の監督は、王貞治さん。

 ライトスタンドから、三塁側の巨人のベンチの中に、往年のホームラン王の姿を探し求めていたあの日を思い出します。

 時代が変わっても、野球の楽しさは変わらない。人が移っても、精神の何かは受け継がれている。

 33年の時を超えて、熱い (おも) いがつながった気がした夕暮れでした。

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茂木 健一郎  (もぎ けんいちろう) 脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。近著に、「成功脳と失敗脳」(総合法令出版)。

353805 1 世界を脳から読み解く 2018/09/24 03:00:00 2019/01/30 19:26:46 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180919/20180919-118-OYTPI50091-L.jpg?type=thumbnail

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