唇や舌を使い「パ・タ・カ・ラ」…口の機能維持訓練、記者が体験
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年を重ね、食事中に食べこぼす、舌がうまく回らない――などを経験していないでしょうか。口の働きが落ちてきたのかもしれません。北海道大学歯学部准教授の渡辺裕さんに、機能を維持する方法を米山粛彦記者(43)が教わりました。
食欲が落ちた…原因は、口の周りの筋力低下かも
唇を閉じ、舌で食べ物を歯のそばに運び、かみ砕き、のみ込む。食事の際、口は様々な動きをします。しかし、口の周りの筋肉が衰えることで、いずれかの働きが落ち、食欲の低下や低栄養を招く恐れがあります。「衰えは気付かないうちに進むので、日頃の訓練が大切です」と渡辺さん。
最初に教わった訓練は、口を大きく開けたまま10秒間保つという内容です。下顎と喉仏の間をつまむと、筋肉が硬くなるのが分かります。10秒間の休みを挟み、計5回、朝夕に行います。顎が痛い人は無理せず、できる範囲で口を開けます。
口を大きく動かせば、広範囲の筋肉が強くなる

喉近くの筋肉を鍛え、のみ込む力の保持に役立ちます。口を大きく動かすと、広い範囲の筋肉が強くなるそうです。しばらく開けていたところ、顎の周りが疲れてきました。「筋肉が働いている証拠です」と助言をもらいました。
次は「パ」「タ」「カ」「ラ」の音を続けて発する訓練です。まず「パ・タ・カ・ラ」と口をゆっくり大きく動かします。慣れてきたら「パタカラ、パタカラ」と早口で繰り返します。口の動きを意識すると、各音で唇や舌の先、舌の奥を使っているのが分かります。頬に手を当てると周辺の筋肉の動きを感じられます。
最後は、上の前歯の裏側を舌で押すという訓練でした。5秒押したら、つばをのみ込みます。舌は筋肉の塊で、やせてくると、かみにくさやのみ込みにくさを起こすため、訓練が予防につながります。
ここで、オーラルフレイルが進む要因を尋ねました。渡辺さんによると、硬い食べ物を避ける、退職後に人と会わなくなる――などで口を動かす機会が減り、筋肉がやせていくそうです。これが動かしにくさに拍車をかける悪循環を生みます。
食事では1口あたり30回、左右両方の歯でかむ
普段から積極的に口を動かすことが大切です。〈1〉食事では、1口あたり30回、左右両方の歯でかみ、厚い肉や薄い葉物が食べにくくても避けない〈2〉大きく口を開けて会話し、うれしさや驚きの気持ちは表情にはっきり出す〈3〉歯磨き後の「ぶくぶくうがい」を長めに行い、口にふくんだ水を速く強く動かす――を心掛けるといいそうです。
食事や会話の際、口の周りの筋肉が活躍していることを学びました。食事や会話は生活の質を左右します。筋肉を弱らせないよう、普段から口を大げさに動かし、積極的に鍛錬することが大切だと思いました。