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アンチエイジングの基本は「あの人は若いね!」ですね。あの人は「ハツラツとしていますね」はまさに行動や意欲の面で若い、ということですが、見た目が実年齢よりも若く感じられる、というのも大事です。
反対に「あの人は最近めっきり老けたね」なんていうのは聞きたくない言葉です。
この見た目の若さはどの程度、信用できるのでしょうか?
加齢度を反映する「テロメア」の長さ
その前に、そもそも「若さ」、つまり暦での年齢ではなく、現実的な加齢度を客観的に測定できる指標はあるのか考えてみましょう。

例えば、加齢に伴って機能の低下が見られるものには、筋肉の力や、腎臓などがあげられます。運転免許の更新の際に調べる動体視力もそうですね。こういう個別の臓器の機能ではなくて、体の加齢度を大きく反映するものに、「テロメア」の長さがあります。
テロメアというのは、DNAを格納している染色体の末端に付いている部分で、染色体を靴ひもに例えると、その両端に付いているプラスチック製の覆いのような存在です。私たちの体には37兆個の細胞があり、これらの細胞は、私たちが生きているかぎり分裂し、新たな細胞に入れ代わり続けています。
例えば、血液の白血球は、数日で入れ替わっていきます。この細胞分裂に深く関わっているのが、細胞の染色体の端にあるテロメアと呼ばれる構造です。細胞が細胞分裂をするたびに、このテロメアは少しずつ短くなりますが、このテロメアがあるおかげで、染色体の端っこは「擦り減らない」ようになっています。テロメアがなくなってしまうと、細胞は分裂できなくなり、老化して死滅します。
喫煙やストレスがテロメアを短くする
からだのすべての細胞の中の染色体にこのテロメアがありますが、白血球のテロメアの長さは比較的に簡単に調べることができます。テロメアの長さ、あるいは短くなったテロメアの割合は、うつ病、動脈硬化、心臓病などの頻度と関連、加齢度の指標となることから、テロメアを発見した米国のエリザベス・ブラックバーン博士は、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。テロメアを短くしてしまうものには喫煙、そして悲観すること、心理的なストレスがあげられます。
気分自体が老化を早めてしまうのは、恐ろしいことですね
見た目年齢とテロメアの長短
そこで、このテロメアの長さと見た目の年齢が関係するかどうか、デンマークで双生児を対象とした研究がされました。この研究では、看護師さん、若い男子学生、高齢女性の三つのグループが、実年齢を知らずに、双生児1826人の「見た目年齢」を予測しました。驚くべきことにこの三つのグループがつけた「見た目年齢」はほとんど同じでしたので、私たちは「見た目年齢」を感じる共通のものさしを持っていることになります。
そして、この見た目年齢はテロメアの長さや、短いテロメアの頻度と関係していました。見た目の若い人のほうが、テロメアが長い傾向になったり、短いテロメアが少なかったりしたのです。
二卵性双生児では見た目年齢がより高齢だと早死に?
テロメアの長さは加齢による変化ですので、生活習慣が関係します。先ほど紹介した研究は双生児を対象としており、一卵性双生児と二卵性双生児で、見た目が年を取って見えるほうが早く亡くなる傾向があるかを検討してみました。一卵性双生児はDNAが一緒、つまり遺伝子は全く一緒です。見た目が年を取って見えるほうが早く亡くなるのであれば、これは遺伝子には関係なく、生活習慣によることになります。二卵性双生児は、遺伝子は一緒ではありませんが、胎児期など人生の最初を一緒に過ごしています。二卵性双生児で、見た目が年を取って見えるほうが早く亡くなるのであれば、これは遺伝子が関係する可能性が大です。
結果は、二卵性双生児では、見た目年齢が高いほうが早く亡くなってしまう一方で、一卵性双生児では、見た目年齢は早く死亡するかどうかとは関係ありませんでした。つまり、生存率は、そもそも自分が親から受け継いだ遺伝子に関係するということがわかりました。さらに関連する研究から、喫煙や飲酒、運動といった習慣も遺伝子と関係することがわかりました。お父さんが喫煙をすると自分もする、親がスポーツ好きであれば自分も運動をするというのも、環境だけでなく遺伝子が関係するのです。
遺伝子のリスクを知った生活習慣を
「見た目年齢」が、遺伝子のどこに関係するのかは複雑ですが、すでに私たちの遺伝子からどのような健康リスクが予想されるかという情報の提供は、海外では盛んになっています。このようなリスクを知ってこそ、はじめて運動をする、喫煙しない、ポジティブに考える、といった生活習慣が意味を持ってくるでしょう。
この5年間の写真を見て、「どうも年をとったな」と感じたら、このテロメアを伸ばす努力が必要です。次回にその秘密をお話しします。
