完了しました
前回、「見た目の年齢」が、私たちのDNAを格納している染色体の末端に付いている「テロメア」と呼ばれる部分の長さに関係することをお話ししました。私たちの体は、1個の受精卵が次々に細胞分裂してつくられています。細胞が分裂するたびに、このテロメアがすり減って短くなると、それ以上細胞は分裂できない、「老化」した細胞になるという内容でした。
「老化」細胞は有害物質を放出

また、テロメアが短くなると、DNAも傷がつきやすくなります。実際にテロメアの長さは「見た目」だけでなく、加齢に伴う病気全般に関係します。テロメアが短くなると、細胞が分裂しにくくなり、組織の再生が困難になりますので、心筋梗塞や脳梗塞、骨粗
また「老化」した細胞は、ただじっとしているだけでなく、有害な物質(炎症性サイトカインといいます)を放出します。関節炎のような慢性的に痛みや組織の破壊を生じる炎症は細胞が「老化」、すなわちテロメアが短くなると起こりやすいのです。
テロメアを伸ばす酵素テロメラーゼ
このテロメアはDNAと同じ物質ですが、たんぱく質を決める遺伝暗号は含まれていません。実は、テロメアは細胞分裂のたびに短くなるのではなく、細胞にはテロメラーゼという酵素があり、この酵素が働くと、短くなったテロメアを伸長する作用があるのです。 つまり、テロメラーゼという酵素の働きが良ければ、細胞のテロメアは短くなりにくく、結果的に「見た目」も若くなります。
ストレスがテロメアを短くする
テロメアを発見した米国のエリザベス・ブラックバーン博士と共同研究をした、エリッサ・エペル博士は、日常生活でのストレスでテロメアが短くなることを初めて報告しました。
ストレスの感じ方は人それぞれです。心配性、楽天家、それぞれストレスへの対応は異なりますが、強いストレスを長い間経験することがテロメラーゼの働きを抑えて、結果的に細胞のテロメアは短くなって、老化が進行してしまうのです。
ストレスホルモン・コルチゾール
このメカニズムには、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの働きがあります。私たちが、危険や危害を察知すると自律神経である交感神経が働き、俗に言う「闘うか、逃げるか」という反応が起きます。このときに副腎からコルチゾールというホルモンが出て、心拍数、血糖値があがり、汗が出ます。
コルチゾールはステロイドホルモンとも呼ばれ、免疫反応を抑制します。このコルチゾールはテロメラーゼの働きを抑えることがわかっており、したがって慢性的なストレスは結果的にテロメアを短くして、エイジングしてしまうのです。
テロメラーゼの働きを高める瞑想
逆にマインドフルネス、気功、太極拳などでゆったりとした気分になるとテロメラーゼの働きが高くなり、テロメアは長くなります。「キルタンクリヤ」と呼ばれる
瞑想でアンチエイジングができるのは面白いですね。次回は「がん」治療とテロメアについて考えます。
