遺伝子と体重、アンチエイジングの関係とは

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順天堂大学大学院教授、泌尿器科医 堀江重郎

 梅雨が明け、暑い日が続くようになりました。酷暑は困りますが、夏に日差しがないと寂しい気がします。

 さて、日本抗加齢医学会の年次総会が6月14日から16日まで横浜市で開催され、アンチエイジング医学の最先端を行く様々な研究成果が発表されました。神奈川県の黒岩祐治知事がメッセージを寄せ、横浜市の林文子市長が講演を行ったほか、3日間で延べ6000人を超える抗加齢医学の研究者、医療関係者が会場に足を運び、最新の知見に耳を傾けました。

 取り上げられたテーマは、細胞の中で起こる生命現象、皮膚老化の治療、サプリメントから、ロボットに関する技術を研究する「ロボティクス」、人工知能(AI)に至るまで、多岐にわたりました。今回は、その中からいくつかの話題を取り上げたいと思います。

体重も遺伝子で決まるの?

写真はイメージです
写真はイメージです

 ヒトの全ゲノムは2003年に解読されました。当時は1人のDNAを解読するのに約100億円の費用がかかりましたが、今では10万円を切るほど解析コストは安くなり、解析に要する時間も1日程度と、スピードも格段に速くなりました。

 個人ごとの遺伝子のわずかな違い(遺伝子多型)を解析すると、様々な病気のリスクがわかります。それだけではありません。体形や顔、声、性格などもわかるようになりました。身長は、成人になってからはあまり変わりませんが、体重は変動していきます。

 国立研究開発法人「理化学研究所」(本部・埼玉県和光市)の鎌谷洋一郎客員主管研究員は、10万人以上の日本人のゲノムデータを用いて体重調節に関係する遺伝子を解析しました。すると、免疫細胞が体重と関係していたことがわかり、結果を今回の総会で報告しました。16年には海外の研究者が、免疫細胞であるマクロファージやナチュラル・キラーT細胞(NKT細胞)が体重調節に関与していることを報告しており、日本人を対象とした今回の研究でも、それが裏付けられたことになります。

 体重は、やみくもに「減らせばいい」のではありません。おそらく私たちには遺伝的に適切な体重があるのでしょう。その範囲であれば、「健康」で、若々しい「アンチエイジング」の状態を保つことができるのではないかと考えられます。

 ただし、動物においてはカロリー摂取を減らし、体重を減らすと、確かに長生きはするのですが、生殖活動は低下します。健康長寿と種の保存は、必ずしも両立しないのかもしれません。

ビタミンDが果たす重要な役割

 ビタミンDは骨の健康に重要な役割を果たし、骨粗しょう症の治療にも使われている……ということは、皆さんご存じですね。ビタミンDは、サケ、マグロ、サンマといった魚から摂取することもできますが、日光を浴び、体内のコレステロールが変化することによっても生成されます。

 屋内で窓越しに日光に当たっても、ビタミンDはできません。曇りの日や日陰にいる時も同じです。皮膚の色がもともと黒い人は、生成量は低い傾向にあります。肥満の人は、体脂肪がビタミンDに結合し、ビタミンDが血中に入るのが阻害されます。

 ビタミンDの不足は、骨の健康に悪いだけでなく、高血圧や、花粉症などのアレルギー、結核、歯周病、多発性硬化症、冬季うつ病、末梢動脈疾患、1型糖尿病を含む自己免疫疾患、パーキンソン病などの疾病のリスクを高めることが知られています。男性では、勃起不全との関連性が指摘されていますので、日光をしっかり浴びた「日焼け」が男らしさのシンボルと言われるのには一理あります。

 また、ビタミンDは、結腸直腸がん、前立腺がん、乳がん、腎臓がんを予防する可能性があることが示唆されています。

 この一方で、日焼けは皮膚の加齢を促進します。太陽がまぶしい季節に屋外に出る時には、紫外線から皮膚を守るサンスクリーン剤(日焼け止め)を使うことが、特に女性においては、当たり前になっています。しかし、ビタミンDは一日1000IU(国際単位)程度の摂取が必要と言われ、世界的にみても、「不足しがち」な栄養素です。

 さて、今回の学会では、東京慈恵医科大学の浦島充佳教授が、ビタミンDサプリメントとプラセボ(偽薬)を用いた比較試験を行い、結果が報告されました。肺がんや消化器のがんにかかった患者で、血中のビタミンDの濃度が低い場合、ビタミンDサプリメントの摂取によって生存期間が延びることがわかりました。肺がんや、胃がん、大腸がんの治療を受けている方は、ビタミンDの血中濃度を測定してもらうとよいでしょう。

 以上、今回は日本抗加齢医学会の総会から最新の話題をお届けしました。

プロフィル
堀江 重郎( ほりえ・しげお
 順天堂大学大学院教授。泌尿器科医。日米で医師免許を取得し、泌尿器科学、腎臓学、分子生物学を学ぶ。国立がんセンター中央病院、帝京大学教授などを経て、2012年より現職。アンチエイジング医学を研究する医師が集う日本抗加齢医学会理事長。手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を駆使する泌尿器科医のトップランナーとしても知られる。

無断転載禁止
725752 0 アンチエイジングな生活 2019/08/05 05:00:00 2019/10/28 11:01:53 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/08/20190802-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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