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脳動脈瘤とともに<3>0・95% 迷った末決断

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Bさん(左)は現在も片岡さんの診察を定期的に受ける(大阪府吹田市で)
Bさん(左)は現在も片岡さんの診察を定期的に受ける(大阪府吹田市で)

 1年間で0・95%。脳の血管にできるこぶ、脳動脈 りゅう が破裂する危険性について、日本脳神経外科学会の研究チームが約6000人の患者を追跡して推計した数字だ。こぶの最大径が大きいほど、危険性は高まるとされる。問題は、そのリスクをどうみるかだ。

 大阪府の会社員女性Bさん(56)は2016年8月、大阪市内の病院で検査を受けた。父が脳 梗塞こうそく になり、自分もそうなるかも、と思った。脳梗塞ではなかったが、約7ミリの脳動脈瘤が見つかった。

 「良かったですね。すぐに手術しましょう」と医師。「何が良いことなの」。Bさんは混乱した。

 日本脳卒中学会の指針では、脳動脈瘤が5~7ミリ以上なら、開頭手術や血管内治療を検討することが勧められる。治療で、後遺症などが出る可能性も数%ある。

 紹介を受けた国立循環器病研究センター病院(大阪府吹田市)で、現在は脳神経外科部長を務める片岡 大治ひろはる さんに診てもらった。片岡さんは「『すぐ』でなくても、大丈夫です」。

 「なんとか手術を避けられないの」。Bさんは必死にもがいた。治療を経験した人のインターネットのブログを読んだり、さらなる検査を受けたり、別の医師の意見を聞いたり。数週間おきに通院するたび、片岡さんに思いを切々と訴えた。

 片岡さんによると、治療するかどうか、「医師の判断に任せる」とすぐ決断する患者は少数派だ。半数以上の患者は迷いに迷い、数年にわたってためらう人もいる。

 未破裂の脳動脈瘤の治療は、あくまで予防が目的だ。治療効果とリスクを比べ、患者本人が受けるかどうかを決めるのが基本になる。片岡さんは「患者さんが迷うのは当然。でも、受診するということは、治りたいとの思いがあるから。経過観察した場合にリスクが高いと考えられる患者さんには、丁寧に手術や血管内治療を勧めます」と言う。

 Bさんは結局、数か月かけて気持ちを整理し、手術を決意した。仕事の事情などもあって手術を受けたのは10か月後だった。

 手術後4年が過ぎた今、Bさんは仕事と趣味を両立して元気に過ごしている。「私が納得いく選択ができるまで、とことん向き合ってくれた先生のおかげで今がある。心から感謝しています」

効果とリスク

  くも膜下出血で母を亡くした辻田秀樹記者から

 多くの人は、病気がないことを確かめるために脳ドックを受けるという。内心は、「あってほしくない」「ないはずだ」という思いだ。妻(43)は、自身の母に脳動脈 りゅう があると知り、脳ドックを受けた。結果は異常なし。私もほっとした。

 未破裂の脳動脈瘤の治療判断は、新型コロナワクチン接種の説明にどこか似ている。「効果とリスクを比べて判断」とされるが、現実感のない数字だけでは、判断が難しい。医師と患者の丁寧な対話が重要だと思った。

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2225396 1 医療ルネサンス 2021/07/22 05:00:00 2021/07/22 05:00:00 Bさん(左)は現在も片岡さんの診察定期的に受ける(大阪府吹田市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210721-OYT8I50102-T.jpg?type=thumbnail

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