[震災8年]長期の避難 介護限界…原発被災11市町村

[読者会員限定]
無断転載禁止
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

災害公営住宅の集会所に集まって、体を動かす避難住民たち(2月26日、福島県三春町で)=関口寛人撮影
災害公営住宅の集会所に集まって、体を動かす避難住民たち(2月26日、福島県三春町で)=関口寛人撮影

 住み慣れた地域から避難し、家族と離れたことで、元気だったお年寄りも体の衰えが進んだ。東京電力福島第一原発事故で避難指示が出された福島県の11市町村では、要介護者が増え、介護費が膨らむ。介護予防に取り組もうにも、全国各地に住民が避難している現状では限界がある。自治体からは「このままでは高齢者の生活を支えきれない」と懸念する声が出ている。

住民分散 支援届かず

 認知症の高齢者が少人数で暮らす福島県三春町のグループホーム。深夜、入所者男性(85)の部屋を職員がのぞくと、「葛尾に帰るんだ」と荷造りをしていた。2015年春の入所以来、繰り返されてきた光景だ。

 原発事故が起きるまで同県葛尾村で暮らした男性は、介護とは無縁の毎日だった。妻に先立たれたが、長男夫婦と孫の5人暮らし。朝から畑で野菜を作り、車を走らせ友人宅に遊びに行った。

 原発事故後、村から25キロ離れた三春町の仮設住宅に一家で避難してから、歯車が狂い始める。狭い部屋にこもり、たばこやアルコールの量が増えた。認知症の症状が表れ、夜、家族をたたき起こすようになった。

 避難から3年半後、脳梗塞こうそくで倒れた。家族が仮設住宅で支えるのはもう限界だった。今は要介護3。「原発事故の避難生活がなければ、今も元気だったろうに」。かつての男性を知る誰もが口をそろえる。

 葛尾村は昨年4月の改定で、65歳以上の人が納める介護保険料が全国最高の月額9800円となった。要介護者は原発事故前の1・6倍の156人に増加。村が昨夏に発足させた対策検討チームが、10年度と17年度の介護サービスの利用件数を分析したところ、認知症のグループホームは10倍になっていた。村は要介護者全員のケアプランを見直し、無駄がないかチェックを開始。新年度からは要介護者以外の65歳以上にも、一人ひとりに「予防ケアプラン」を作る意向だ。

 団塊の世代が75歳以上になる25年度の介護保険料は3万2566円と推計される。原発事故前の10倍という「非現実的な数字」(馬場弘至副村長)に、危機感が広がっている。

 葛尾村以外の市町村も、高齢者を要介護状態にしないための予防に懸命だ。今も全町避難が続く大熊町は、町民の半数近くが暮らすいわき市を中心に脳を活性化させるための教室を開催。郡山、会津若松市でも予防事業を実施しているが、県内外に点在する町民を全てカバーするのは困難で、遠方に出向く町職員の負担も大きい。

 富岡町も町内や避難中の町民がいる5市町村で「元気アップ教室」を開いており、60~90歳代の544人が登録している。避難指示が出た地域の住民は現在、高所得者を除き、介護保険料の負担などが免除されているが、富岡町の担当者は不安を隠さない。「国の財政支援が今後打ち切られ、免除がなくなれば、住民が高額の保険料を負担することになる。さらに人口が流出するのではないか」

471060 1 国内 2019/03/03 05:00:00 2019/03/03 05:00:00 2019/03/03 05:00:00 災害公営住宅の集会所に集まって、体操などを楽しむ富岡町からの避難住民たち(26日午前10時58分、福島県三春町で)=関口寛人撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190303-OYT1I50015-T.jpg?type=thumbnail

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ