3密「夜の社交場」クラスター、店名公表対応分かれる
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ナイトクラブやショーパブなどといった「夜の社交場」で新型コロナウイルスの感染が広がっている。密閉空間に人が集まる「3密」の条件を満たす場所でクラスター(感染集団)が生じるリスクが浮き彫りになった格好で、感染拡大地域を抱える自治体の首長らは、夜間営業する接客業などの利用自粛を呼びかけている。
福井で死者
「明らかに感染者が広がっているが、調査は困難を極めている」。大阪府の吉村洋文知事は1日、府庁での記者会見で危機感をあらわにした。
府によると、大阪市北区のナイトクラブと、飲食をしながら歌や踊りを楽しむショーパブで、3月にクラスターが発生。2店の客や従業員ら少なくとも計10人が感染していた。

和歌山県が2日に感染を発表した県内在住の60歳代男性も、3月23日にこのナイトクラブに客として訪問。2店の周辺の飲食店の客やその濃厚接触者まで含めると、少なくとも計25人の感染が確認された。
福井県も2日、女性従業員が接客して酒を提供する福井市内の飲食店で、従業員2人と男性客7人の計9人の感染が確認されたと発表。このうち50歳代の会社役員男性1人が死亡した。
県は「ラウンジに近い店」と説明。客の知人ら8人にも感染が広がっているといい、杉本達治知事は、接客を伴う飲食店の利用自粛を呼びかけた。
東京・北海道も
新型コロナウイルスは、〈1〉換気の悪い密閉空間〈2〉多くの人の密集〈3〉密接しての会話――の条件が重なる「3密」の状況が生じる場所で、
東京都では、小規模なナイトクラブやバーなど接客を伴う飲食店のほか、国内有数の歓楽街・歌舞伎町やその周辺にあるキャバクラ店の女性従業員や、風俗店の業務に携わる男性に感染が拡大。北海道最大の歓楽街・札幌市のススキノでも、ライブバーに勤める女性や客ら、約20人の感染が確認された。
店名公表できず
2月以降、大阪市のライブハウスで発生したクラスターでは、店側の協力を得て府が店名を速やかに公表した結果、濃厚接触者らの特定が進み、16都道府県で計105人(府まとめ)の感染を確認できた。
府は今回クラスターが発生したナイトクラブとショーパブについても、客らに検査を促すため店名を公表したい考えだが、店側の同意が得られていないという。
府による感染者からの行動履歴の聞き取りは難航している。府幹部は「非公式の接待などで訪れるケースがあり、説明を渋る人がいる。店側が風評被害を恐れていることもある」と調査の難しさを打ち明ける。
札幌・ススキノのケースでは店側が当初、風評被害を懸念して店名公表を渋ったが、保健当局側が「不特定多数が濃厚接触した可能性があり、感染を拡大させてはならない」と説得したという。
北海道の担当者は「報道で店名を知った客が申し出るなどし、全員を把握できた」と語った。