感染者への中傷、ネットで横行…「不安」「ゆがんだ正義感」で加速

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、インターネット上で感染者の名前や住所を特定したり、中傷したりする書き込みが目立っている。真偽不明の情報も飛び交い、感染者の通学先や自治体に電話も殺到している。感染への不安が背景にあるとみられるが、緊急事態宣言の発令で長引く自粛のストレスでさらに過激になる恐れもあり、専門家らは「戦う相手は人ではなくコロナ」と呼びかけている。

 

■学生への抗議や中傷、数百件

 「卒業を取り消せ」「感染した学生の名前を公開しろ」。京都産業大(京都市北区)には、学生によるクラスター(感染集団)が判明した翌日の3月30日以降、抗議や中傷の電話やメールが数百件あったという。

 SNSやネット掲示板にも、「生物兵器」といった内容が書き込まれ、「感染した学生を特定した」などと個人名や家の写真を投稿するケースも出ている。

 京産大のクラスターは、3月2~13日に英国やフランスなど5か国を卒業旅行で訪れた学生3人から拡大したとみられる。だが、出発時点では5か国への渡航に注意を促す「レベル1」の情報も外務省からは出ていなかった。京都市も感染を発表した際、「学生を強く非難することはできない」としていた。

 学生が参加したゼミの懇親会で感染が拡大したことなどがわかると、ネット上で批判が巻き起こった。京産大には「大学に火をつける」と脅迫にあたるような電話もあり、大学は対応を検討している。

 

■公開情報を悪用

 感染症法は、国と都道府県に感染者の情報を積極的に公表するよう定めている。感染拡大防止には、その行動経路から濃厚接触者を洗い出すことが重要だからだ。

 勤務先については、病院や福祉施設を除いて発表しないケースが多いが、企業の多くは自ら公表している。日本マクドナルド(東京都)や100円ショップ「ダイソー」を展開する大創産業(広島県)もそうだ。

 しかし、感染の拡大を防ぐための情報を悪用して中傷や差別が起きている。

 徳島県は2月25日、感染が確認された大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客女性について、藍住町在住と公表した。すると、町役場に女性の住所や名前を特定しようとする電話などが数十件殺到。SNSに真偽不明の女性の行動歴も書き込まれ、町が女性への中傷をやめるよう呼びかける事態となった。

 医師ら5人の感染が確認された兵庫県小野市の北播磨総合医療センターでは、職員が引っ越しの予定を業者にキャンセルされるなどの事例が相次いだ。

 

■専門家がメッセージ「感染者悪くない」

 実害も出た。高松市のスーパーチェーン「ムーミー」では、会長夫妻が大型クルーズ船に乗っていたとの偽情報が2月にSNS上で拡散。店頭の貼り紙で否定したが、本店の2月の売り上げは前年より10%減り、SNSの情報が虚偽と報道されるまで回復しなかった。

 担当者は「一度デマが広がってしまうと、自分たちの力だけではどうにもできなかった」と振り返った。

 中傷が続けば、感染者が自治体に情報の公表を拒むケースが出てくる恐れもある。

 政府の専門家会議の参加者らでつくる「専門家有志の会」は、ホームページで感染者や家族に宛て、「あなたは悪くありません」とのメッセージを発信。一人で悩みを抱え込まないよう呼びかけている。

 佐藤佳弘・武蔵野大名誉教授(社会情報学)は「感染への不安やゆがんだ正義感が背景にある。虚偽投稿は名誉毀損きそんにあたり、事実でもプライバシー侵害で損害賠償請求の対象になる。真偽不明の情報が拡散すれば社会不安が広がる。個々が冷静に感染防止に取り組むことが必要だ」としている。

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