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世界自然遺産の候補地となっている鹿児島県の奄美大島と徳之島で、特産のかんきつ類「タンカン」の木が、特別天然記念物アマミノクロウサギにかじられる被害が相次いでいる。無許可での捕獲は原則禁じられているうえ、生態が不明な部分も多く、想定外の「難敵」に農家や自治体が頭を悩ませている。
畑に姿を見せたウサギが後ろ脚で立ち上がって、幼木にかじりついたり、枝を折ったり――。被害状況を調べるため、鹿児島大農学部の高山耕二准教授(畜産学)が徳之島町
この畑の持ち主、吉本
高山准教授によると、ウサギは硬いものをかじりたがるが、なぜタンカンの木がこれほど狙われるのかは分からないという。
アマミノクロウサギは外来種のマングースや野生化した猫に襲われる事例があり、これまで「被害者」としてクローズアップされることが多かった。
だが、県によると、タンカンの木の被害が2017年頃から徳之島町と奄美大島・大和村で確認され始めた。両町村の被害面積は17年度が1・1ヘクタールで、18年度は2・2ヘクタールに広がった。
大和村では数百本の苗木がほぼ全滅した農家もあるという。村産業振興課の福本新平課長補佐は「まさか天然記念物による食害が出るとは……。詳しい生態も分からず、有効な対策が見つからない」と戸惑う。
環境省によると、03年時点のアマミノクロウサギの生息数は奄美大島に2000~4800匹、徳之島に約200匹と推定され、その後は増加傾向にある。マングースの防除事業などが奏功しているとみられる。
天然記念物は文化庁の許可を得ずに捕獲することなどができず、県は18年5月から地元自治体や鹿児島大などと随時、「アマミノクロウサギ対策会議」を開き、防護柵を設けたり、現地調査したりしてきた。
一方、世界自然遺産登録には、アマミノクロウサギなど希少生物の保護が欠かせない。県大島支庁は「アマミノクロウサギは島の財産。できる限り早く、共存共栄できる方法を考えるしかない」と話す。