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自転車で下校中にトレーラーにはねられた茨城県内の女子高校生(16)が、読売新聞の取材に応じた。一時は意識不明の重体となり、今も当時の記憶はない。「生きているだけで奇跡」と話す。一方で、交通ルールに反して道路の右側を走っていたことを周囲から聞かされ、後悔もしている。
事故に遭ったのは、高校に進学したばかりの昨年5月。自宅の最寄り駅で電車を降り、自転車で帰宅する途中だった。
現場は、見通しのいい直線道路。その右側を走り、対向してきたトレーラーとぶつかった。ヘルメットはしていなかった。
ドクターヘリで搬送され、集中治療室へ。脳内のあちこちが出血し、頭蓋骨や
女子生徒が意識を取り戻したのは、事故の8日後。母親(53)によると、初めは目の焦点が合わなかった。約1か月間の入院を経て、別の施設でリハビリの日々。「言いたいことがあっても声が出ない。入院中に体力が落ち、少し歩くだけでも疲れた」という。
それでも、歩行訓練などに励んだ結果、夏休みの直前、学校に復帰できた。腕や脚に傷痕は残るが、生活に支障はない。
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事故の記憶は全くない。ただ、父親から「ぶつかった衝撃で20メートル近く飛ばされていた」と聞き、「命のありがたみを実感する」。
道路交通法では、自転車は「軽車両」に分類され、原則として車道を走るよう規定されている。女子生徒も事故当時、車道を走っていた。左側を走らないといけないことも、知っていた。ただ、左側通行を常に意識していたわけではなかった。
事故当時、トレーラーをよけようとして、とっさに車道中央に向けてハンドルを切ったとみられる。県警の調べでは、トレーラーも車道中央側に方向を変え、結果的に中央線付近で衝突した。女子生徒は今、自転車を降りて歩道に避難するなど別の方法があったと考えている。
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事故の怖さは、学校の講習会などで学んでいたはずだった。しかし、事故に遭うとは考えず、「大丈夫だろう」と高をくくっていた。事故後は自転車に乗らず、通学は両親の送迎などに切り替えた。
スマートフォンを見ながら自転車を走らせる、イヤホンを着けて音楽に夢中になる……。両親は自転車を「ながら運転」する中学生や高校生を見るたび、「危ないな」と感じる。「時間に追われているのかもしれない。中高生にも事情はあるのだろう」。そんな前置きをしたうえで、語気を強めた。
「命より大事なものはない。子どもたちは肝に銘じてほしい」