津波・台風・コロナ乗り越え…「くじら館」、支援を力に不屈の再開

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マッコウクジラの骨格標本を前に、再開への期待を語る湊さん
マッコウクジラの骨格標本を前に、再開への期待を語る湊さん

 東日本大震災で被災した岩手県山田町の「鯨と海の科学館」が15日、震災後、2度目のスタートを切る。捕鯨基地として栄えた町の歴史を伝える同館は、震災の6年4か月後に再開したが、昨年10月の台風19号で再び被災。さらに新型コロナウイルスの影響で休館を余儀なくされた。9年余りで3度の苦難を乗り越えた館長の湊敏みなとさとしさん(70)は「支えてくれた人たちに諦めない姿を伝えたい」と語る。

 思い出すのは9年前の光景だ。湊さんは震災9日後、職員らと泥をかきわけ館内へ入ると、世界最大級のマッコウクジラの骨格標本(体長17・6メートル)だけが天井からつるされたまま残っていた。約8メートルの津波で、ほかの展示物はほとんどが流失していた。

 「これを復興のシンボルにしよう」と、気持ちを奮い立たせた。当時は町観光協会の事務局長で、1か月後の館長就任が決まっていた。

 後押ししてくれたのは、全国から駆けつけた800人以上のボランティア。職員らと泥をかき出し、残った資料の洗浄を重ねた。

 台風19号の襲来は、観光客も増え、ようやく軌道に乗り始めた頃だった。近くの山から雨水と土砂が押し寄せ、館内は最大30センチ浸水、駐車場は50センチほどの土砂で覆われた。「津波に続いて、今度は大雨」。このときも助けてくれたのはボランティアだった。盛岡工業高校の生徒らが駐車場などの土砂を撤去してくれた。

 新型コロナの影響で3月1日の再開が延期され、気落ちした時はかつての来館者に励まされた。宮崎市の女性からは宮崎で親しまれている、こいの代わりに鯨を掲げる「くじらのぼり」が届いた。科学館の入り口に飾ると、「珍しい」と子どもたちが見に来てくれた。「再開したら、孫を連れて行きたい」との声も寄せられた。

 再出発の「7月15日」は3年前、震災後に再開した思い入れのある日だ。湊さんは「苦難のたびに、多くの人の励ましが力になった。今度は励ましてくれた人たちに応える番」と話す。

 公開は当面、マッコウクジラなど一部だけだが、震災や台風からの復興の様子を映像で紹介するコーナーを設けた。「町の歴史とともに、被災の記憶を伝え続けていかなければいけない」。湊さんは力を込める。

 ◆鯨と海の科学館=1992年に開館、山田町が運営する。「くじら館」の愛称で親しまれ、2階建ての館内には、捕鯨に関する道具や深海生物の模型など約200点が並ぶ。展示の目玉であるマッコウクジラは、町で捕鯨が終わる直前の1987年、釜石沖で捕獲された。

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1342205 0 社会 2020/07/15 05:00:00 2020/07/15 07:44:52 2020/07/15 07:44:52 震災や台風など度重なる苦難を乗り越えて再開する鯨と海の科学館(12日午後3時17分、山田町船越の鯨と海の科学館で)=斉藤新撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200715-OYT1I50031-T.jpg?type=thumbnail

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