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皿洗いを条件に苦学生らに無料で食事を提供してきた「
京都大や同志社大の学生らの下宿が多い街角にある店内は、昼になると若者らでいっぱいになる。
井上さんは京都市伏見区で生まれ、20歳の時、妻と駆け落ちして大阪に出た。6畳一間のアパートでの貧乏暮らし。食費も切り詰めていたある日、職場の先輩が夕飯にすき焼きをごちそうしてくれた。「どんだけ貧乏でも、満腹にさえなれば幸せになれるんや」。この経験が原点となった。
王将に入り、別の店の店長になった1982年から「社会に恩返しをしたい」との思いで「皿洗いで無料」のサービスを始めた。95年に、出町店のオーナーになってからもサービスを続け、学生街の名物に。「親から仕送りが届かない」「試験勉強が忙しくてバイトする余裕がない」。学生が皿洗いにすがる理由は様々だ。
店に置かれたノートには、「バイト代が入ったら(お金を持って)食べに来ます」などお礼の言葉があふれている。卒業して就職してから感謝の気持ちを伝えに来る人が多く、恋人を連れて、「結婚します」と報告に来た男性もいたという。
衛生上の理由で2年前に皿洗いは中止し、今は「昨日からご飯を食べていない人」などに限り、対価を求めず食べさせている。
井上さんは「新型コロナウイルスで学生の暮らしが大変な時に店をしまうのは心残りやけど、ここで出会えた人たちは一生の宝物や」と顔をほころばせた。