申請急増で支給優先、組員のコロナ支援資金詐取相次ぐ

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 新型コロナウイルスの影響で収入が減った世帯に無利子で貸し付ける「緊急小口資金」や、主に失業者向けの「総合支援資金」を、暴力団組員がだまし取る事件が山梨県内や東京都など全国で相次いでいる。暴力団関係者は貸し付けの対象外だが、審査を担う各地の社会福祉協議会(社協)が迅速な給付を優先した結果、申請内容の確認がおろそかになっている実態がある。

 (前田遼太郎、鈴木経史)

■性善説が前提

 「申請件数が膨大で支給のための作業を優先せざるを得ない。手続きの隙間を突く手口だ」。県社協の中山吉幸事務局長は憤る。

 山梨県警は9月29日、南アルプス市に住む暴力団組員の男(42)を詐欺容疑で逮捕した。男は今年7月、組員であることを隠して申し込み、県社協から緊急小口資金20万円を借り入れて詐取し、8月には同じ手口で総合支援資金15万円を県社協から詐取した疑い。

 厚生労働省によると、二つの資金は元々、低所得世帯や障害者がいる世帯などを対象にしていたが、コロナの感染拡大に伴い、3月25日から特例として「仕事がなくなるなどして収入が減った世帯」にまで対象を広げた。ただ、2009年7月28日付の厚労省通知で「暴力団員が属する世帯を除く」と明記されている。

 申込書には暴力団関係者でないことを確認する項目があるが、「性善説に立った自己申告」(厚労省)で、実際の確認作業は都道府県の社協にゆだねられている。

■氷山の一角

 これまで山梨県社協は審査の際、申請者が暴力団関係者かどうかを県警に1件ずつ照会してきたが、特例制度が始まって以降、申請が急増し、個別に照会することができなくなった。

 今回逮捕された男は2018年の傷害事件に関わったとして9月2日に逮捕された。事件を報じた新聞を読んだ県社協の担当者が県警に照会し、不正がわかったという。県警幹部は「こうした不正は氷山の一角だろう。厳格な対応をとる必要がある」と警戒する。

 同種の事件は全国で相次いでいる。警視庁は9月、組員だったことを隠して東京都社協から緊急小口資金20万円を借り入れて詐取したとして、詐欺容疑などで元組員の男を逮捕した。都社協では、特例制度前の年間貸付件数は約2000件だが、開始後は1日の審査数が2000~4000件に増え、人員を増やして対応している。

■不正防ぐ努力を

 暴力団幹部の男ら7人が逮捕された宮崎県社協の関係者は「膨大な数なので、書類上の不備がなければ申請を通している。慎重な審査は難しいというのが本音だ」と語った。全国社協によると、3月25日~9月12日に緊急小口資金と総合支援資金は全国で計107万件、計3524億4000万円が貸し付けられている。

 社会福祉問題に詳しい結城康博・淑徳大教授は「コロナ禍で苦しむ人への貸し付けを急ぐのは当然で、審査が甘くなるのは仕方ない面はある。ただ、審査の人員を増やすなど、少しでも不正を防ぐ努力は怠ってはならない。不正が発覚したら厳格に返還を求めることも欠かせない」と指摘する。

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1522445 0 社会 2020/10/05 10:58:00 2020/10/05 11:24:30 2020/10/05 11:24:30

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