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価格高騰、狙われる「黒いダイヤ」…密漁摘発が難しい理由とは

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 香川県沖などで密漁を繰り返したとして、高松海上保安部などの合同捜査本部が3~6月、香川県小豆島町と高松市在住の男女12人のグループを漁業法違反(無許可操業)容疑などで逮捕する事件があった。標的となったのは近年価格が高騰し、「黒いダイヤ」として密漁が全国で相次ぐナマコだ。一方、摘発のハードルは高いのが現状で、水産庁も対策強化を進めている。(黒川絵理、畝河内星麗)

売り上げ1200万円

 暗闇の中、海に浮かぶ1隻の船。船上で監視役が見守る中、海中から潜水役が船に上がる。港に戻ると、獲物が入ったとみられるバケツが次々と水揚げされ、軽トラックの荷台が埋まっていく――。合同捜査本部が公開した密漁の動画だ。

 グループは小豆島の漁港を拠点に、4隻の船で昨年12月~今年2月、香川県沖や兵庫県沖で潜水器を使い、ナマコなどを密漁したなどとされた。

 グループでの売り上げは1200万円にのぼるとされた。7月、メンバーの男2人の公判で、検察側は1日の密漁で6万3000円を売り上げていたとし、「ナマコを根こそぎ、大量捕獲していた」と指摘した。

 乾燥ナマコは中国でフカヒレなどと並ぶ高級食材とされる。「黒いダイヤ」とも呼ばれ、密漁が後を絶たない。水産庁によると、2018年までの過去5年間では、年間26~40件を摘発。また、ナマコの漁獲高は19年、6500トンで、06年の1万344トンから4割近く減少した。資源管理を無視した密漁が影響した可能性もある。

見分け困難

 だが、摘発のハードルは高いのが現状だ。

 水産庁によると、密漁の手口は悪質、巧妙化。今回も、グループは密漁を夜間に無灯火で強行。男の1人は公判で「夜だったので捕まらないと思った」と供述した。さらに、密漁に使われた4隻の船はいずれも逃走用に高馬力のエンジンを装着。高性能のレーダーを搭載し、周囲を警戒していた。

 また、漁業法では摘発対象を許可が必要な漁業を無許可で「営んだ」場合と定めており、海保などには、密漁で生計を立てていることの裏付けが求められる。だが、捜査関係者は「市場に出回れば、違法に取られたナマコと正規のナマコは見分けが困難なため、立証が難しい」と漏らす。

 法定刑も重いとはいえない。現行の漁業法では、「懲役3年または罰金200万円」。グループのメンバーの一部は公判が続いているが、主犯格とされた男(54)に出された判決も懲役1年、執行猶予5年、罰金80万円にとどまった。7月に公判があった男ら2人は過去にも密漁で罰金刑を受けていたが、うち1人は被告人質問でそのことについて尋ねられると淡々と答えた。「忘れていた」

流通封じ

 事態を受け、水産庁などは厳罰化や密漁ナマコの流通を封じる対策を急ぐ。

 ナマコの密漁については、法定刑の上限を「懲役3年または罰金3000万円」と、罰金について15倍にする改正漁業法が18年に成立し、今年12月に施行される。同法では、摘発対象も単に「アワビやナマコなどを採捕した場合」とされ、仕事でない密漁も摘発が可能になる。

 また、水産庁が設置した有識者らの検討会は6月、密漁が相次ぐ水産物を対象に、産地などを示して適正に取られたことを証明する「漁獲証明」がなければ流通できないようにする制度を提言。今後、導入が予定されている。

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1525881 0 社会 2020/10/06 14:08:00 2020/10/06 14:26:48 2020/10/06 14:26:48

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