生活保護抜け出した32歳、きっかけは…双極性障害で仕事失った末に

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 この夏、一人の若者が生活保護から脱却したことがSNS上で話題となった。双極性障害(そううつ病)となって仕事を失い、27歳で保護に頼る身となった大阪市西成区の男性(32)。病と貧困に苦しんでいた若者がコロナ禍の世の中で苦境から抜け出したきっかけは、1台の自転車だった。(大原圭二)

退職、発病

 男性は兵庫県西宮市出身。高校卒業後、専門学校で介護福祉士の資格を取り、2009年に県内の高齢者福祉施設に就職した。

 4年後、千葉県内の施設に転勤。見知らぬ土地での一人暮らしになじめず、利用者のおむつ替えができなくなるなど仕事にも支障をきたした。出勤が怖くなり、無断欠勤の末、退職した。

 実家に戻ると、気分の浮き沈みがひどくなり、双極性障害と診断される。入退院を重ね、定職に就けず生活保護に頼った。家族との関係も悪化し、退院後はグループホーム生活を経て西成区の家賃約4万円のアパートに行き着いた。保護費は月10万円前後。食費を1日1000円に切り詰めた。

 男性は「保護を受けることに後ろめたさや恥ずかしさがあったが、生きる目標もなく、無気力な日々を過ごしていた」と話す。

挑戦宣言

 今年2月、大きなリュックを背負った自転車の男性が目に留まった。ウーバーイーツの配達員だった。体調と相談しながらマイペースで働けることに心が動いた。毎月少しずつためていた保護費で約2万円のマウンテンバイクを購入。3月から配達を始め、1か月で8万円を稼いだ。額に汗して働く充実感に、さらに前へ踏み出す勇気がわいた。

 「生活保護の廃止(終了)に挑戦します」。4月から始めたツイッターで宣言し、自身の境遇や仕事での出来事を投稿すると、配達仲間が注文が多く入るエリアを教えてくれた。よく稼ぐ仲間の情報に「自分も」と奮起した。孤独な仕事と思っていたが、一人ではないことに気付いた。

 新型コロナウイルスの影響で宅配需要が高まったことも重なり、配達エリアはミナミを中心にキタや天王寺まで広がる。週100件以上の注文を受け、月給は20万円を超えた。ケースワーカーからも「自立できる」と背中を押され、8月、生活保護の受給をやめた。

恩返し

 保護脱却を伝える投稿はネット上で話題となり、ツイッターには「励みになる」「リスペクトしてます」などのコメントが多数寄せられた。フォロワーは約1500人。男性は「独り立ちできたのは周りの支えのおかげ。自分も誰かの力になり、恩返しをしたい」と話し、自身の経験を発信し続けている。

20歳代の受給者約5万3000人

 20歳代の生活保護受給者は2018年度、約5万3000人に上った。受給者全体に占める割合は2%だが、10年前の08年(3万7000人)と比べると、1・4倍に増えた。新型コロナウイルスの影響で若者のさらなる貧困化が懸念される。

 生活保護からの脱却も課題だ。18年度の全受給者のうち保護暮らしが5年以上続く人は全体の6割を占めた。20歳代の世帯に限ると、就職などで保護を廃止できたのは5年前より280件少ない2020件だった。厚生労働省は受給者に適した仕事をケースワーカーとハローワークが連携して探すといった支援事業を18年度に実施。参加した約14万人のうち約6万人は就労や収入増につながった。

 生活保護制度に詳しい明治大の岡部卓専任教授(社会福祉学)は「若者は家族形成など将来の人生設計に与える影響が高齢者より大きい。コロナ禍でリモートワークなどの新たな働き方も生まれつつある。行政は企業と連携し、就労につなげる努力を一層すべきだ」と話す。

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