マスク姿のGファン、無言で万歳…「全力の拍手が選手の力になる」
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コロナ禍を戦い抜いた――。読売巨人軍は30日、2年連続でセ・リーグを制した。感染拡大で開幕が約3か月遅れ、無観客で始まった異例のシーズン。苦しい日々を乗り越えた選手とファンは格別の喜びを分かち合った。

巨人は十回表のヤクルトの攻撃を抑え、引き分け以上が決まって優勝。主将の坂本勇人選手(31)はベンチに戻り、両手を挙げてガッツポーズした。試合終了後、感染防止のためマスクと手袋をした球団職員らが原辰徳監督(62)を胴上げすると、チームメートと輪になって万歳した。
今季は通算2000安打まで116本として臨んだ坂本選手。年明けからインフルエンザを2度発症し、春季キャンプで背中を痛めた。6月3日には新型コロナウイルスの感染が判明。無症状だったが、10日間の入院を余儀なくされ、病院の一室で黙々と素振りを繰り返した。
シーズン序盤は無観客だったが、7月、5000人を上限に観客が入るようになった。間隔を空けて座り、応援歌の合唱やハイタッチは禁止されたが、ファンの姿を見た坂本選手は思わず涙ぐんだ。

「これまで何万人というお客さんが来てくれていたのは本当にすごいことなんだ。今こそ期待に応えるプレーをしないといけない」
マジックナンバー「1」とした30日は、初回に左前打を放ち、ピンチになると投手に駆け寄って声をかけた。その姿をスタンドから見つめていた、さいたま市の会社員、山下博さん(45)は「苦しい試合でも、辛抱強くチームを引っ張ってくれた。本当に頼りになる主将です」と話した。
入場者数の制限は、9月19日から「収容人数の50%以内」に緩和された。観客は好機を迎えると、手拍子で励ます「新しい観戦様式」で選手らを後押しした。
この日の東京ドームの観客は約1万8000人。マスク姿の巨人ファンは、優勝が決まると、無言で万歳をしたり、選手名が入ったタオルを掲げたりして喜びを表した。
今季約50試合を観戦した千葉市中央区の会社員(49)は「本音を言えば、応援歌を歌ったり、大声で声援を送ったりしたかった。でも、今年は全力の拍手が選手の力になると信じて球場に足を運んだ。きょうは優勝して本当にうれしい」と興奮していた。