交差点に設置、歩道もなくバス停の移設困難…調査で初めて危険性認識のケースも
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国土交通省が30日、先行して公開した危険なバス停は6県で780か所にのぼった。リストには、学校や商業施設、住宅街や生活道路など身近な場所も含まれる。今回の全国調査で行政機関が初めて危険性を認識したケースもあり、安全対策が急がれる。(蛭川裕太、杉本和真)
■協力
30日夕、三重県鳥羽市にあるバス停「長岡中学校前」。停車した路線バスに乗り込む数人の中学生を2人の教員が見守った。
バス停はそばに横断歩道があり、「Aランク」と判定された。車がすれ違うのがやっとという狭い道路に面し、伊勢志摩を巡る観光客らの車も多く、下校時は教員が周囲に立つ。
道路が狭いため、バスがバス停に停車した際、すぐ近くの飲食店やガソリンスタンドの敷地に車体が入ることもあるが、経営者らが了承するなど周辺住民が自主的に協力し合う。ガソリンスタンドを経営する男性(59)は「地域の人が車を運転する時は、停車したバスが発進し、安全になるまで待つというのが共通認識になっている。ただ、事情を知らない観光客らの車も多いので心配だ」と話す。
鳥羽市によると、バス停近くでの事故はなく、事故につながりかねない事態も報告されていないため、今回の調査で初めて危険性を認識したという。市の担当者は「移設なども含めて早急に対応を検討したい」としている。
■事業者
調査段階から移設が難しいとされるバス停もある。

Aランクと判定された長野市稲葉日詰の「日詰」。交通量が多い県道と大型商業施設につながる道路の交差点に設置され、そばには横断歩道がある。
周囲は居酒屋や住宅が立ち並び、歩道がないため、バス停を移設すれば、建物への出入りを妨害しかねない。横断歩道から少し遠ざけて、危険度をBランクに下げようとすると、商業施設へつながる道路を停車したバスがふさぐ格好になる。今月9日、現場の調査に訪れた長野運輸支局の担当者は「移設はかなり難しいだろう」と話した。
このバス停は二つの事業者が共同で使っており、年間で計約7000人が利用する。事業者は「横断歩道に車体がかからないように停車させる対策をとっているが、抜本的な対策は難しい。仮に移設させるとしても、住宅などの地権者との話し合いに時間がかかるだろう」とする。
長野県では、全バス停の2・4%にあたる243か所が危険なバス停に該当した。長野運輸支局によると、自治体から運行委託を受けたコミュニティーバスの路線が多く、住民の要望で便利な交差点や横断歩道付近に設置されたケースが散見されるという。
同支局の担当者は「バス停は、様々な議論を経て設置されたり、転々としてようやく今の場所に落ち着いたりと、それぞれに歴史が違う。関係者が多くて移設が難しい場合、まず危険性を周知するなどのソフト対策も活用して早急に安全を確保していきたい」と語る。