豊洲市場のマグロ競り見学、8か月ぶりに再開
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豊洲市場(東京都江東区)で2日、新型コロナウイルスの影響で中止されていたマグロの競りの一般見学が、約8か月ぶりに再開された。外食産業の需要減で厳しい経営環境に置かれた水産物業者は、見学の再開で市場に活気が戻ることを期待している。

まだ薄暗い午前5時55分。鐘の音を合図に市場内の水産卸売場棟で競りが始まると、集まった人たちは見学者デッキからガラス越しに、無数のマグロが並ぶ競り場に見入った。小学生の息子2人を連れた都内の主婦(42)は「身ぶり手ぶりで競りが進む様子が見られ、良かった」と笑顔だった。
競りの見学には昨年、計約1万人が参加した。2月末の中止までは日に2回開催し、計120人を受け入れていたが、再開後は1回にし、27人に絞る。豊洲でも8月以降、仲卸の従業員ら計13人の感染が確認されており、見学者にもマスク着用や手指消毒などを徹底する。
先月11日、築地(中央区)からの移転、開場から2年となった豊洲市場は苦境のただ中にある。水産物の取扱金額は4月に前年同月比33・8%減まで落ち込んだ後、回復傾向にあるが、9月も7・4%減となった。
仲卸たちは販路の拡大でコロナ禍を乗り切ろうとしている。冷凍マグロを主力にする「大元商店」は3月に通販サイトを開設し、家庭向けの鍋セットなどの販売を始めた。巣ごもり需要もあって通販が売り上げ全体の3割を占めた月もあり、横田繁夫社長(53)は「本業はもちろん、一般向けにも力を入れたい」と意気込む。
干物などを扱う「倉田商店」は、都心のオフィス街に出したキッチンカーでの弁当の売り上げが好調だ。6月から始め、多い日には約100食が出る。倉田俊之社長(58)は「消費者と直接話せるので、ニーズを把握できるようになった。本業にもプラスになる」と前向きに語っている。