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通説「早生まれは何かと不利」研究で裏付け…ならば「誕生月格差」を逆転するには?

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[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「早生まれ」。

 

 「1~3月(4月1日を含む)」の早生まれは、何かと不利が多い――。幼少期にはよく当てはまる話だが、実は大学進学や賃金の水準、プロスポーツといった幅広い面で「4月2日」以降に生まれた方が有利になるとの研究結果が出た。こうした「誕生月格差」は、運命と受け止めるしかないのだろうか。

体格、進学…「格差」は大人まで

 最も不利とされるのが誕生日が「4月1日」の人たちで、菅内閣で総務相を務める武田良太・衆院議員(52)もその一人。小学1年生でラグビーを始めた当初は同級生より身長が10センチ以上低く、「負けたくない」との気持ちから牛乳やご飯を何杯もおかわりして体を大きくした。本人は「高校生以降はほとんど意識することがなかった」と振り返るが、早生まれをバネに努力を重ねたケースと言える。

 誕生月格差は幼少期にとどまらない点で深刻だ。東大経済学部の山口慎太郎教授(44)らが今年7月に発表した研究論文によると、3月生まれと4月生まれを比べた場合、入学した高校の偏差値は4月生まれの方が平均で4.5ポイントも高くなった。この結果、大学の進学率や大手企業に就職できる割合でも4月生まれが優位となる。

 30~34歳の男性の場合、1~3月生まれは4~6月生まれに比べて賃金水準が3.9%も低くなるという別の研究結果も出ている。学歴や就職先で差が生じれば、「誕生月格差」が長期化・固定化するというわけだ。

 スポーツの世界ではとりわけ顕著となる。プロ野球選手2238人の誕生月は「4~6月」が34%を占めるのに対し、「1~3月」は半分の16%にすぎない。小学生の野球選手では誕生月の分布に目立った違いはないものの、中学、高校と進むにつれて「1~3月」の割合が減っていく。調査をした東京農大の勝亦陽一准教授(41)は「心身の成長面で不利となり、練習や試合出場の機会が十分に与えられないまま競技から離脱してしまう」と分析する。

「9月入学」に影

 こうした問題は、政府の教育再生実行会議が将来の導入を検討している「9月入学」にも影響しそうだ。仮に実現すれば「6~8月」生まれが不利となり、該当する子供や保護者の反発が予想される。9月入学が一般的な米国では、大手企業の経営者は「9~11月」の割合が多く、「6~8月」は少ないという。時期の違いこそあれ誕生月格差は洋の東西を問わない。

 ただ、欧米では子供の成長度合いに応じて入学時期を1年遅らせるといった柔軟な対応がしやすいのに対し、日本ではそうもいかない。男女、地域、所得といった様々な格差が存在する中でも、山口教授は「誕生月による差は個人差の方がはるかに大きいものの、社会全体の傾向としては無視できないレベルだ」と、是正の必要性を訴える。

「技術力や思考力で逆転できる」

 もっとも、かつては「早生まれは得生まれ」とも言われた。早く学校を卒業して社会に出る分、多く稼げるため、あえて出産の時期を早生まれになるように希望する夫婦もいたという。

 参考までに政官財の首脳の誕生月を調べてみた。対象としたのは菅内閣の閣僚(21人)と各省庁の事務次官・長官(16人)、経団連会長・副会長(19人)の計56人。早生まれの「1~3月」は14人で、「4~6月」の13人を上回った。誕生月に関係なく努力を重ねたのだろう。

 実は、プロ野球でも首位打者や最多勝といったタイトルを取る選手に限れば、一転して「1~3月」生まれが最も多く、「4~6月」の倍近くになる。早大硬式野球部出身の勝亦・准教授は、子供たちにこうエールを送る。「幼少期のハンデも技術力や思考力で補おうという視点を持てば十分に逆転できる」

[MEMO]4月1日 なぜ早生まれ?

 東京商工リサーチは2016年、全国の企業社長のうち誕生日が判明した約99万5000人の分布状況を調べた。早生まれとなる「1月1日~4月1日」が29.6%と最も多く、「4月2日~6月30日」は22.2%にとどまった。

 早生まれが不利なのであれば経営者になる割合も少なくなりそうなものだが、同社の後藤賢治氏は「親子で経営を引き継ぐ中小企業では誕生月格差が影響しにくいことや、かつては切りのいい1月1日や4月1日にずらして出生届を出すケースがあったため」とみている。

 一方、誕生日が「4月1日」の場合、早生まれに分類されるのはなぜだろうか。

 年齢計算に関する法律などでは、「一つ年をとるのは誕生日の前日が終了する時(=午後12時)」と規定している。つまり誕生日当日の午前0時と同時刻に当たる。これは、うるう年の2月29日が誕生日の場合を念頭に置いた措置とされる。

 その上で、学校教育法などでは満6歳に達した子供は、その翌日以降に迎える4月1日から就学するように定めている。4月1日が誕生日の子供は3月31日に満6歳となるため、翌4月1日に小学校に入学。4月2日生まれとは違う学年になるというわけだ。

経済部 山下福太郎

 誕生月占いで一喜一憂するより、努力で早生まれの不利は克服できるはず。1月31日生まれ。

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1625320 0 社会 2020/11/14 05:00:00 2021/06/08 12:45:13 2021/06/08 12:45:13 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201113-OYT1I50064-T.jpg?type=thumbnail

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