調布陥没、外環道工事との因果関係は…住民「工事しか原因は考えられない」
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東京都調布市の住宅街で市道が陥没し地中に空洞が見つかった問題で、東日本高速道路(NEXCO東日本)が設けた有識者委員会は、原因に関する報告書を取りまとめている。関係者によると、早ければ週内にも公表する予定だ。現場地下では、東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事が進んでおり、工事と陥没との因果関係を認めるかどうかに注目が集まっている。(金山真梨)
■住民の不安


「家屋や健康被害の調査にご協力ください」
京王線つつじヶ丘駅(調布市)から歩いて5分ほどの閑静な住宅街で今月7日、近くに住む女性(59)が近所を一軒一軒まわりながら、トンネル工事に関する被害調査票を手渡していた。
この住宅街では10月18日、市道が陥没し、11月には空洞が2か所確認された。その地下47メートルでは同社などが、東名高速と関越道をつなぐ外環道のトンネル工事を進めており、9月に掘削用機械が通過していた。
周辺住民が異変を感じていたのはその頃だ。「揺れと騒音がひどく、食器棚の食器がかちゃかちゃ音を立てていた」「地面に亀裂が入り、隙間ができた」――。被害を訴える声が相次ぐようになる。
女性は、原因究明や被害の回復などを求めて11月に設立された住民連絡会のメンバーの一人だ。連絡会で被害の全容を把握するため、トンネルの真上やその付近にある約300戸に調査票を配布。回収、集計したうえで結果を有識者委員会に届け、同社との交渉に活用する予定だ。
■特殊地盤
最初の空洞が確認されたのを受け開かれた11月5日の有識者委員会。その後の記者会見で同社担当者が「(現場の)地盤には特殊性があるようだ」と述べ、9月の終わりごろ、掘削用機械が止まったことを明らかにした。現場の地盤が想定以上に硬かったのが原因だ。
同社などによると、現場は軟弱な粘土層の下に、砂利や粗い砂を含んだ強固な地盤が続く。この中でも、特に硬い層が工事地点にあったという。
同日の会見で有識者委員は空洞がもともとあった可能性について触れたが、日大の鎌尾彰司准教授(地盤工学)は「大深度でも硬い層を掘れば、地上に揺れが伝わることはあり得る」と指摘。「揺れが軟弱な粘土層で増幅し、地盤が緩んで空洞や陥没につながった可能性や、硬い層を掘ろうとして土砂を多く取り込んでしまった可能性も考えられる」とみている。
■「ショックだ」
有識者委員会は週内にも、陥没や空洞の原因について調査報告書を公表する予定だ。
11月に見つかった空洞の真上に自宅がある女性は、2003年に建て売り住宅を購入。その際、地下4~5メートルで行った地盤調査で問題がなかったとする報告書を確認していた。「安心して家を買ったのにショックだ。外環道のトンネル工事しか空洞の原因は考えられない」と訴える。
掘削用機械は、陥没があった10月18日以降、地下で止まったままだ。同社によると、長期間、掘り進めないでおくと、地中の圧力のため故障の恐れがあるというが、住民連絡会代表の滝上広水さん(71)は「安全安心が確認できるまでは工事再開はできない」と語気を強める。
工事予定地の上に住む女性は「すでに壁のコンクリートがはがれる被害が出ている。工事が再開し、自宅の下を掘削機が通過するときは怖くて家にいられないだろう」と不安な表情だ。「陥没や空洞のせいで資産価値が下がり、家は売れないだろうから引っ越しもできない。原因究明と補償をしっかりしてほしい」と求めていた。