中2女子生徒が手作りマスク、困っている人思い3000枚…夢は続く
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ネットで中傷を受けたことは、もう気にしていない。たくさんの手作りマスクを寄付した中学2年生の滝本
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「歩いて3軒も回ったのよ」。困ったようなお年寄りの声が聞こえ、滝本さんは振り向いた。

ドラッグストアで、リュックを背負った80歳ぐらいの女性が店員に話しかけていた。マスクを探して店を巡っているらしい。今年2月、甲府市の自宅近くでのこと。新型コロナウイルスの感染が拡大しつつあり、マスクが品薄になっていた。
困っているお年寄りが他にもいるのではないか。そう考えていると、小学校で給食当番の時に使っていた布マスクを思い出した。「布マスクって簡単に作れるのかな。教えてほしい」。一緒にいた母親に、そう切り出した。
家に着くと、すぐに不織布マスクで型を取った。ミシンで1枚を試作。縫い目をまっすぐそろえるのが難しかったが、自分でも出来そうだった。2月下旬から合間を見つけてミシンの前に座り、多い日は1日30枚ほど作った。花柄や水玉などかわいらしい模様の布を選び、ガーゼ、ゴムひもなどと一緒に、お年玉で購入。母親から「欲しいものはすぐねだるのに、珍しいね」と驚かれた。
600枚ほど完成した3月中旬、母親に相談し、山梨県に寄付。県内の高齢者施設や障害者施設に配布された。「一人でも多くの人に使ってほしい」。新聞やテレビの取材に素直な気持ちを話した。紙面やニュースで紹介され、恥ずかしかったが、誇らしさも感じた。
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取材を受けてまもなく、うれしくてスマートフォンで自分の名前を検索してみて、息が止まった。
〈手作り布マスクなんて効果がない〉
〈親の金でやってるんだろう〉――。見知らぬ人のSNSの投稿に、スマホを持つ手が震えた。
「間違ったことだったのかな」「無意味なのかな」。何をしていてもつらく、食欲がなくなった。新型コロナによる一斉休校で友達にも会えず、ふさぎ込んだ。母親がそっとミシンを押し入れにしまってくれた。
そんな時、全国の人から県に届いた手紙を受け取った。その数、約100通。
〈コロナの暗いニュースが多い中で勇気づけられた〉
〈悪口を言われるかもしれないけど気にしないで〉
温かい言葉があふれていた。読み進めていくと気持ちが晴れ、また、ミシンを使いたくなった。
県には「作り方を知りたい」という声が寄せられていた。滝本さんは材料に作り方の説明書を添えた手作りマスクキットを1100セット作り、県に寄付。県がホームページに作り方を公開してくれた。
手作りマスクの輪も広がった。山梨県
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滝本さんがこれまでに配ったマスクは約3000枚にのぼる。今でも「欲しい」という手紙が届けば、ミシンを動かす。
頭の片隅にあった「医師」という漠然とした将来の夢が、明確な目標に変わりつつあるという。「誰かの力になれることのすばらしさを実感できた。医師なら、それが実現できるのかな、って感じです」。目を輝かせて話す姿に、元気をもらった。(藤原聖大)