【独自】母親「宝物だった命、肉団子一つで失われ怒りや不信感」…詰まらせた5歳児死亡で施設調査へ
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和歌山県岩出市の児童発達支援センター「ネウボラロッツ」で昨年12月、ダウン症の男児(5)がミートボールをのどに詰まらせて死亡した事故を受け、県は22日午後にも児童福祉法に基づき、施設への立ち入り調査を行う。子どもや障害者が施設での食事で、のどを詰まらせて死亡する事故は各地で相次ぐ。県は当時の職員の配置状況や

県などによると、男児は昨年12月22日、施設内で昼食に出されたミートボールをのどに詰まらせて救急搬送され、同28日に窒息による低酸素脳症で亡くなった。
児童発達支援センターは、障害のある未就学児を対象にした通所型支援施設で、ネウボラロッツはNPO法人「ロッツ」が運営。両親は、保健師の勧めで男児を3歳の時から平日の週5回、同施設に通わせていた。
男児はあごの力が弱く、食べ物を細かく刻む必要があったが、事故後、施設側は県に対し、「(担当の保育士は)刻む前のミートボールを男児の前に置いた」などと説明しているという。
施設は事故後、運営を休止中で、取材に対し、「警察の捜査を受けている最中でコメントは差し控える」としている。県は、当時の職員の配置や食事の提供状況などを調査し、違反が見つかれば、処分を検討する。県警岩出署も関係者から事情を聞いている。
両親「全てを明らかに」
男児の両親は読売新聞の取材に応じ、「信頼して預けた施設で、なぜ息子が死ななければならなかったのか。全てを明らかにしてほしい」と訴えた。
両親によると、男児を2年前、施設に預ける際、食べ物を刻むよう求め、施設側からは「食事の時は必ず保育士が1人専属でつく」と聞いていたという。
だが、事故後、謝罪に訪れた施設側は「(当時)担当の保育士は男児を含め、4人の子供の食事介助を行っていた」と説明。男児の前に刻まれていない状態のミートボールが置かれ、「いただきます」の合図があった後、保育士はほかの子供の世話で目を離していたとも聞かされた。
母親(40)は「宝物だった子供の命が肉団子一つで失われたことに、怒りとか憤りとか不信感があります。空虚という言葉では足りない喪失感」と話す。父親(43)も「ずっと一緒にいられると思っていたのに……」と悔しさをにじませた。
男児は3兄弟の末っ子。妊娠中にダウン症の可能性があることは検査でわかっていたが、両親2人の気持ちは「障害があるとわかっても覚悟して生むのが親になるということ。ありのままを受け入れよう」。出産や育児に迷いはなかった。
生まれつき病弱で、誕生後は7回の手術を経験したが、母親は「大変なことも気にならないくらい、生まれた瞬間から
毎晩、家族で男児の頬をつつき、「宝物だよ」と声をかけるのが日課だった。成長がゆっくりで、1年前にしゃべり出すと、「たたもも(宝物)!」とうれしそうに言って、家族の頬をさわり返してきたという。
事故後、ネットでは、男児や親に責任があるかのような中傷が相次いだ。
父親は「死んだ息子は何も悪くない。(施設には)改善点を全部出してほしい」と語り、母親もきっぱりした口調でこう話した。
「施設の方には、息子の生前、とてもよくしてもらい、感謝していますが、事故に関してだけは許せない。そこの真実は県や警察にきちんと話してほしいです」
食事で事故 各地の施設で
施設での食事で子供や障害者が、のどを詰まらせる死亡事故は、後を絶たない。
昨年2月、大阪市の保育園では1歳の男児が給食のリンゴなどで窒息死。市の検証部会は「誤嚥防止の配慮が十分でなかった」との報告書をまとめた。昨年9月、東京都八王子市の認定こども園では、4歳の男児が給食のブドウで死亡した。
また、大阪府守口市の障害者福祉施設では2019年6月、利用者の中学1年の男子生徒(当時12歳)が唐揚げをのどに詰まらせて死亡。生徒はあごの力が弱く、食べ物を刻む必要があったが、そのまま提供されていた。
同年11月には、滋賀県内の県立特別支援学校に通う重度障害がある生徒が、昼食のジャガイモをのどに詰まらせ死亡した。