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太田光さん「マスク会食」酷評を反省…「ぺこぱ」的発想必要かも [コロナ #伝えたい]

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 2度目の緊急事態宣言が発令されている。私たちが一刻も早く、コロナを乗り越えるには――。そのためにいま「#伝えたい」ことを、感染の経験や独自の視点を持つ著名人に聞いた。

 ――国内で新型コロナウイルスの感染が広がり始めて1年になります。

爆笑問題・太田光さん(55歳)
爆笑問題・太田光さん(55歳)

 去年2月、政府によるイベント自粛要請の直前、「それほど恐れるべきなのか」とラジオで言ったんです。たくさん批判を受けました。そうしたら、(司会を務める情報番組の)「サンデー・ジャポン」で、ホリエモンと俺とトランプ大統領という顔ぶれで写真を並べられて。ひどいよね。

 しかしその後、あらゆる社会的な要素がコロナ禍に盛り込まれて、今では世界がこのウイルスに変えられてしまった。自分自身も手洗いとマスクは当然しているけど、もともと仕事場と家を往復するだけの生活で、会食や酒もやりません。

 PCR検査は、相方の田中(裕二さん)が去年8月に感染した時を含め、1年間で5回受けました。帰宅したらまず玄関で上着を着替えてスプレーで消毒する決まりも、(妻の光代)社長に言われてね。社長は対策をしっかり考えていて、抗体検査キットの扱いも上達しちゃって。「ほら指出して」なんて、ピッと刺されてね。

 ――その1年前から現在に至るまで、政府などのメッセージが、特に若年層の一部に伝わらず、十分な行動変容につながらなかったとの指摘があります。

 いくつもの厄介なことが重なっていて、コロナに関わるメッセージを伝えることは本当に難しい。よほどの表現者じゃないと。ましてや「あの表現力では……」という政治指導者もいる。

 だけど、それを責めるのは酷だと思うんだよね。メッセージを受け取る側も「伝わっていないんじゃないか」と言いたくなるけど、受け取る側の想像力も相当要求されているから。

 厄介な点の一つは、「コロナを正しく恐れよう」と繰り返し言っても、立場や状況によって、抱く危機感があまりにも違い過ぎること。全員で同じ恐怖心を共有するのが、本当に難しい。地方と東京。高齢者や基礎疾患のある人と若者。医療従事者やエッセンシャルワーカーと、それ以外の人。テレワークをできない人とできる人。家計や蓄えの状況の差もあるでしょう。

 ――自分が抱く恐怖心でさえ、日々変わっていきます。

 そう。同じ場所に住む同じ人でも、去年の春と現在では感じ方も違うし、それも日々変わっていく。だから今になって、複雑性は増していると思うんですよ。

 ――他にも厄介な点が?

 もう一つは、「感染者は罪人ではないから責めてはいけない」と「感染予防を徹底しましょう」という、極めて正しい二つのメッセージの関係性。要は「コロナは怖いから感染してはいけない。でも感染したとしても悪ではない」というわけで、仕方のないことですけど、矛盾というか咀嚼そしゃくしきれないというか、どうしてもスッとまっすぐ行けない難しさがある。

 「大切な命を守ろう」というメッセージもそうです。コロナ禍が長期化する中で、今日明日の生活のために、自粛を求められたってどうしても店を開けないといけない人がいる。通勤せざるを得ない人がいる。経済を回さなければ命が守れない、と。

 その意味で、経済危機を恐れる人も、感染拡大を恐れる人も、どちらも「命を守ろう」としている。けれど、互いに理解し合うことはできないでしょう。

 ――コロナを巡るメッセージを「伝える」ために、いくつものハードルが重なっています。

「爆笑問題」の太田光さん(右)と田中裕二さん
「爆笑問題」の太田光さん(右)と田中裕二さん

 そうですね。とはいえ、若者たちが特に無自覚かといえば、絶対にそんなことはなくて。おそらくそのおかげでもあって、「欧米の状況と比べて日本ではこの程度で済んでいる」という点も、同時に発信しなければいけない。

 それと一時、「マスク会食」を政府や自治体が強く発信しましたよね。食べる時だけマスク外して、会話する時はマスクしましょうって。あれを一斉に、テレビを中心に「そんなのできねえよ」というニュアンスで伝えてしまった。あの伝え方は失敗だったと反省している、俺は。

 できるもん。食べる時は黙って食べることも。現にそれを小学生は学校でやっているんだから。大人ができないわけがないんです。なのに、「現実的ではない」というトーンで結構言っちゃったんですよね。もうちょっと、伝え方があったような気がしています。

 ――先ほど「受け取る側も想像力が求められている」と。いくつもの厄介ごとを乗り越えるために、どうしたら想像力を高めてもらえますか。

 それがわかれば俺、もっと売れてるんですよ(笑)。常にテッパン、爆笑をとれる芸人になっている。だからそれは本当に、俺にとっても課題だし。みんなが共感できるものを発信したいわけですから、我々は。

 でも一つは、コロナ禍の今、メッセージを〈伝える―受け取る〉ということを含め、それぞれが「相当難しいことをやろうとしている」という大前提を、みんなが持つことが重要なんじゃないかと思っています。

 色んな不満が出てきて、相反する考えの人もいて。そういう時やそういう相手に、想像力を働かせるというのは、すごく難しい。自分が一番嫌いな人の気持ちや立場をおもんぱかるのは難しいですよ。だけど、そこが一番重要かもしれない。

 ――想像力といえば、コロナ禍の前ですが、お笑いコンビ「ぺこぱ」の松陰寺太勇さんが、「かもしれない」を多用した優しいツッコミでブレイクしました。

 「ぺこぱ」の漫才がうまかったのは、「対立」の構図に上から一つかぶせたこと。我々(爆笑問題)の漫才なんかは特にそうだけど、お笑いって、対立なんですよね。俺が言ったことを田中が「そうじゃねえだろ」って。この構造は絶対に崩せなかったんだけど。

 「ぺこぱ」がやっているのは、その対立の上に一つ、「○○かもしれない」や「いや自分が○○すればいい」をかぶせていて。

 もしかしたら今の社会にも、対立の上に一つかぶせる想像力、相手を思いやる発想が、必要かもしれないですよね。

 ――「欧米の感染状況と比べると日本の感染は少ない」という点では、「ファクターX」の存在が言われました。

 ものすごい色んな、複合的な要素があったと思うんですけど、ファクターXの中にはね。ただ、影響が大きかったと思うのは、(昨年3月29日に)志村けんさんが亡くなったこと。あの時のショックは、日本中を「怖い」という気持ちにさせたというのはあるんじゃないかな。

 でも、コロナの死の延長線上で、志村さんを語りたくないんですよ。

 ――と言いますと。

 それは、僕らはやっぱり、子供の頃に「ザ・ドリフターズ」と「コント55号」というのが、最初の笑いの目覚めみたいなもので。ドリフの「8時だョ!全員集合」は本当に、原体験だから。僕の世代はちょっと微妙に、志村さんより加トちゃん(加藤茶さん)なんですけど。要は、志村さんが加わる前に荒井注さんがいて、加トちゃんがヒーローで、っていう時代で。

 だけど「全員集合」の裏で「欽ドン!」が始まると、ドリフから欽ちゃん(萩本欽一さん)に浮気するわけですよ。

 そうしたら急に、「荒井注やめたらしいよ。代わりに志村けんというのが入ったらしい」というんで、最初は、「え、誰だよそれ!?」って。当時8歳、9歳の子供心に、「そんなの認めない」みたいな思いから入るわけです。

 ところが、その人気がどんどん上がっていくわけですよね。ちょっと気になって、「欽ドン!」に行っていたのが「全員集合」にチャンネルを戻してみたら、めちゃくちゃ面白いわけですよ。

 志村さんというのは、ドリフの作ってきたものを自分の新しいオリジナルで塗り替えて。要は、いかりや(長介)さんからは出てこなかった発想で、斬新なんですよね。「カラスの勝手でしょ」とか、東村山音頭とか。

 その後、「全員集合」は「オレたちひょうきん族」に負けるんですよね。でも志村さんたちは「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」でまた復活する。「バカ殿様」も続いていく。

 そういう熾烈(しれつ)なお笑いの歴史をずっと見てきているから、“コロナごとき”の脈絡で語れるものじゃないんですよ、志村さんの話って。たしかに最期はコロナにかかって亡くなったけど、そこは抜きにして「志村けんって偉大だったね」としのびたい人なんです。

 ――その頃も含めて、客席やスタジオに観客がいて、笑い声の中で新しい笑いが生まれていきました。このコロナ禍で経験した「無観客漫才」はどういうものでしたか。

 それこそ、若い頃に客が来なくて無観客なんてことはあったけど。あとスタッフへのネタ見せっていうのも若い頃はあるんですよ。それはもうウケないの前提でやるから。しかも自分も若手だし、こういうことだろうと思ってやっているから。

 でも今、この年になってね。テレビでネタをやる時に無観客という経験もないし。客席に人がいないというのは、「いつもと違うだろうな」とわかってはいるけど、本当に難しかったね。間がつかめないというか。

 でも我々はまだ、テレビ番組の収録を無観客でやったから多少よかったけど、もっとベテランの、ほぼ劇場だけ出てきた人たちなんていうのは、劇場も休みだったから。正月にNHKの「東西寄席」(「新春生放送!東西笑いの殿堂」)という番組があったんだけど、客のいない客席に向かって漫才をすることに、ちょっとかわいそうなぐらい、うろたえていたね。ガッタガタになっていたね、ネタが。

 ――太田さんは無観客に慣れてきましたか。

 自分自身も、慣れないですね、やっぱり。嫌だね。多少でもお客さんがいるのと、全然いないのでは全く違いますよ。お客のありがたみがわかりました、本当に。

 それこそ去年1年間、競馬をやり続けたんだけど、面白いなと思ったのが、去年はレースが全然荒れなかったんだよね。客がいないからだと思うんだけど、本命ばっかり来るんだよね。

 でも、去年はすごい年なんだけどね実は。コントレイルとデアリングタクトという2頭が、日本競馬史上初めて「牡馬(ぼば)牝馬(ひんば)ともに無敗の三冠達成」という大偉業を成し遂げていて。

 そういう意味では、「無観客では強い馬がちゃんと勝つというのはあったんじゃないか」って、(大の競馬ファンで知られる)田中は言っていたけど。

 ――その田中さんは、前大脳動脈解離による、くも膜下出血・脳梗塞こうそくにより入院されましたが、無事に退院されました。田中さんはこれまでも、睾丸こうがん摘出、へんとう切除に、去年は新型コロナ感染もありました。一方、太田さんの健康はいかがですか。

プロ野球・巨人の「ファンフェスタ」に登場し、笑顔で手を振る田中裕二さん(手前)(2019年12月、東京ドームで)=西孝高撮影
プロ野球・巨人の「ファンフェスタ」に登場し、笑顔で手を振る田中裕二さん(手前)(2019年12月、東京ドームで)=西孝高撮影

 自分自身は人間ドックを毎年受けているし、わりと丈夫なんですよね。あと、これは健康のためではないけど、トレーニングみたいなのを毎日やってるんですよ。

 ――トレーニングですか。

 家の階段を30分間上り下りした後、腕立て80、腹筋100、背筋100、側筋(腹斜筋)を右左20ずつ。それを毎日やってます。20年以上前にやり始めた時には腕立てと腹筋だけだったけど。

 ――きっかけはなんですか。

 ワーって騒ぐでしょ、漫才で。そうすると、単独ライブなんか1時間ちょっと漫才をしなきゃいけなくて、息切れしたんですよね。「ああ、こりゃちょっと、できなくなっちゃうな、このままじゃ」と思ってから、毎日欠かさずやるようにしています。階段の上り下りは5、6年になるかな。

 ――今回の田中さんのことは驚き、心配しました。

 今回は夜中でね、最初は「頭痛で救急車を呼んだらしい」って。頭痛ぐらいでと思うかもしれないけど、(光代)社長もちょっと前に、ものすごい頭痛で救急車を呼んだことがあるの。結局調べて何でもなかったんだけど、うち(所属事務所・タイタン)の事務をやっている子も「私も実は頭痛で2、3回呼んだことがある」って。

 コロナで生活のリズムも変わるじゃない。だから、もしかしたら、そういう人も多いのかもしれない。田中の一報も「救急車呼んだらしい」と聞いて、そんな感じなのかなと思ったら、次の電話で「脳梗塞」っていうから、それでびっくりしたよね。

 ――病院に駆けつけたり、会いに行ったりしましたか。

 今、会えないですよ、コロナでね。まあ行く気もないしね(笑)。行ったってしょうがないよ、悪化させるだけで。

 でも1回、退院する1、2日前に電話で話しました。(光代)社長に「アイスクリーム食べたい」って言ったらしいんだけど、その会話の前に。テンション低かったね。

 あいつがかたくなに、人間ドックのデータを(田中さんの妻の)山口もえちゃんに見せようとしない、みたいな話を聞いていたから、「お前『データ隠し』をしてるらしいな」って言ったら、すごいテンション低かった。小さい声で「いや、それは誤解です」みたいな。

 ――流されてしまった。

 そうそう。落ち込んでたのかな。まあちょっと、無理もないよね。皆さんにはお騒がせしました。

(聞き手・森田啓文)

 <略歴> おおた・ひかり 埼玉県出身。日大芸術学部で知り合った田中裕二さん(56)と1988年にお笑いコンビ「爆笑問題」を結成し、ボケとネタ作りを担当。近著に「芸人人語」(朝日新聞出版)。

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