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ベランダから垂らしたヒモ見せ「自殺考えている」…フードバンクにSOS急増

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 もう何日も食べていないんです――。新型コロナウイルスの感染拡大で生活が立ちゆかなくなって、フードバンクに“SOS”を寄せる人が急増している。NPO法人「フードバンク八王子えがお」(東京都八王子市)もその声を受け止めるフードバンクの一つ。広がり続ける支援先に活動の限界を思い知らされつつも、一人でも多くの命をつなぐため食料を届け続ける。(中川慎之介)

 1月17日、食品を請う1通のメールがえがおに届いた。スタッフの佐野紘子さん(78)が送り主の男性に電話をかけると、妻と小学生の子を抱えた男性は切々と苦境を語った。

 「コロナで会社をクビになった。必死で探しても仕事がなく、生活が苦しい」

支援先に届ける食品の仕分け作業に追われる「えがお」のスタッフたち(1月26日、東京都八王子市で)
支援先に届ける食品の仕分け作業に追われる「えがお」のスタッフたち(1月26日、東京都八王子市で)

 えがおは家庭の貧困問題に心を寄せる60~70歳代中心の有志が集まり、5年ほど前から活動している。地元スーパーの店先に寄付箱を置かせてもらうなどし、客らから余った食品を募る。集まったコメやパスタ、お菓子などを、市内の団地にある事務所兼倉庫で段ボール箱に詰め、月に1度、困窮する家庭に配布してきた。

 「2月に食品を届けます」。佐野さんからそう伝えられた男性は「1回だけでしょうか……」と不安げに尋ねた。だが、佐野さんは、「3月までは続けられますが、その後は追ってお知らせします」と応じるしかなかった。今は長期の支援を約束できない。やむを得ない事情があるのだ。

 かつてえがおの支援先は、月に20件前後だった。支援は最長6か月(6回)が決まりだが、窮状が続く家庭には“延長”も受け入れていた。しかし、今、支援先は3倍の60件ほどに膨らんでいる。それも、切迫した支援要請に対応するため、一部の支援先を打ち切って、ぎりぎりまで絞り込んだ件数だ。

 えがおはわずか十数人の高齢者のスタッフで食品の回収や仕分けに加え、自家用車での配達まで担っているので手が回らない。緊急事態宣言下の今は、スタッフによる配達をストップして郵送に切り替えているが、その分、宛名書きの手間や費用が増える。

食品の支援を求める人たちから続々と寄せられるメール
食品の支援を求める人たちから続々と寄せられるメール

 1月も新たに20件超の支援要請があった。やはり支援先の「絞り込み」は避けられそうにないといい、佐野さんは、「支援を求めるメールは夜中にも来る。着信音が鳴ると、ドキッとするようになっちゃった」と悲しげだ。

 コロナ禍で支援先は多様化している。従来は母子家庭が圧倒的多数だったが今は、失職した単身者やアルバイトを打ち切られた学生もいる。ある50歳代の単身男性は工事現場の仕事がなくなり、「4、5日は何も食べていない」と訴えてきた。駆けつけたスタッフにベランダから垂らしたヒモを見せ、「自殺を考えている」と言った。

 佐野さんの夫で、理事長の英司さん(81)は「みんなが追い詰められているのに、我々の活動だけではどうしようもない。この国のセーフティーネット(安全網)はこんなにも機能しないのかと、日々実感させられている」と悔しさをにじませた。

 救いは、苦しむ人たちを心配し、気遣う人々もまた、着実に増えていることだ。

 継続的に事務所に食品を持ち込んでくれる地元の人々、全国から寄せられる食品や現金……。特にコロナ後は、ネット通販「アマゾン」で公開しているえがおの「ほしい物リスト」を見て、送ってくれる人が一気に増えた。昨年度に配った食品は約7・5トンだったが、今年度は既に10トン超に達している。

 「公的な支援がきっちり整備されて、私たちの出番がなくなればいいのにね」

 スタッフたちはコロナ前から、そう語り合っていたが、現状は正反対に進む。フードバンクを通じて受け取る一部の人の善意を支えに、瀬戸際で命をつなぐ人がいる。支援を求める数々のメールを眺めながら、事務局長の三浦すみえさん(77)がつぶやいた。

 「お願いだから、『自助を』なんて言わないで」

 寄付などの相談は、同団体(042・649・7125)へ。

 ◆フードバンク=企業や家庭で余った食品などを譲り受け、生活困窮世帯や福祉施設に無償提供する「仲介役」を担う活動。食品ロスと貧困という二つの問題の解決につながる。アメリカで活動が根付き、日本でも2000年代から民間での取り組みが広がっている。

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1814586 0 社会 2021/02/02 11:56:00 2021/02/02 12:43:13 2021/02/02 12:43:13 支援先に届ける食品の仕分け作業に追われる「えがお」のスタッフたち(26日午後1時11分、八王子市で)=中川慎之介撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210202-OYT1I50028-T.jpg?type=thumbnail

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