児童福祉司、勤務3年未満が半数超…経験不足に「保護者が耳を貸してくれない」
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各地の児童相談所(児相)で、勤務経験の浅い「児童福祉司」が増えている。政府が2021年度までに17年度比で約2000人を増員する計画を進めているためで、昨年4月時点で勤務年数「3年未満」の割合が初めて半数を超えた。厚生労働省は新年度、児童福祉司の研修を強化する事業に乗り出す。
■指導役が助言

昨年4月に新設された東京都江戸川区の児相では、44人の児童福祉司のうち3年未満が8割を占める。1人が受け持つ案件は100件前後。経験不足を補うため、中堅職員が指導役として新人職員を補佐する。
「児相の方とは会いたくありません」。経験が1年未満の20歳代の男性児童福祉司は昨年秋、虐待の疑いのある母親から何度も面会を拒否された。警察から虐待通報があった案件で、早期の安否確認が必要だった。指導役の職員から「難しい事案ほど粘り強く向き合って」との助言を受け、男性は母親に何度も手紙を送り、自宅に通い続けて子供の安全を確認した。
男性は「私自身、未婚で子育ての経験もないため年上の保護者が耳を貸してくれないことも少なくない」とこぼす。区児相の担当者は「経験不足はチームで補うしかない」と話す。

関東地方のある児童相談所長は「3年未満の職員をフォローするため中堅職員に大きな負荷がかかっている。負担を軽減したいが代わりがおらず、新人が育つのを待つしかない」と明かす。
■虐待数最多
厚労省によると、児相が対応した児童虐待件数は19年度、19万3780件で過去最多を更新。10年度(5万6384件)の3・4倍となった。一方、児相で働く児童福祉司は20年4月時点で4234人で、10年(2477人)の1・7倍にとどまる。
政府は、21年度末までに17年度比で児童福祉司を約2000人増やして約5200人とする計画を進める。各児相では、経験者だけでなく、新卒や他部署からの異動で増員に対応。これに伴い、17年度に40%だった勤務年数「3年未満」の割合が20年度に51%に上昇した。このうち「1年未満」は23%を占めた。

16年の児童福祉法改正で東京の特別区に児相設置が認められたことも、未経験者の増加に拍車をかけている。今年度は江戸川、世田谷、荒川の3区が児相を新設し、新年度は港、中野区が新設する予定だ。