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日本画の巨匠・平山郁夫や東山
有元利夫は、イタリアのフレスコ画と日本の仏画に共通点を見いだし、砕いた鉱石が原料の「岩絵の具」などで独自の絵画世界を作り上げて多くの作品を残した。38歳の若さで亡くなったことから「早世の天才画家」とも呼ばれている。
遺族や専門家らでつくる「有元利夫作品鑑定委員会」によると、偽作が見つかったのは、1980~83年に制作されたオリジナル版画6作品。赤を基調とした部屋にいる人物を描いた「赤い部屋」や、淡い色遣いが特徴の「MAGIC 占いの部屋」などで、いずれもアルミ板などに描いた絵を刷る「リトグラフ」だ。
昨年末、外部から6作品の鑑定を依頼され、いずれの作品にも、偽造された有元のサインが入っていることを確認した。紙の質感や色合いも真作と異なり、偽作と断定した。
同委員会は今後、6作品の購入者から相談を受け付ける窓口を設ける。
有元作品に詳しい東京都内の画商は、「6作品はいずれも人気作で、売れ筋の作品を狙って偽作したのだろう」と語った。
見つかった偽作の販売ルートは分かっていないが、平山作品などの偽作の制作を認めた奈良県の60歳代の工房経営者は今月2日、読売新聞の取材に、偽作を販売していた大阪府の50歳代の画商男性から依頼された中に、有元作品も含まれていたと明かした。
業界団体「日本現代版画商協同組合」(日版商)などによると、画商男性は平山郁夫と東山魁夷、同じく日本画家の片岡球子の版画10作品の偽作を販売したことを認めている。工房経営者の話から、流通量は約8年前から約800点に上るとみられている。
警視庁は昨年12月、著作権法違反容疑で画商の画廊や自宅などを捜索し、数十点の版画を押収した。同庁は10作品以外にも偽作がある可能性が高いとみて捜査を進めている。