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県またぎ同じ市外局番、気になって調べたら…大阪のあきんどに負けない商魂

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 尼崎市は、兵庫県にあるのに電話番号の市外局番が府県境をまたいだ隣の大阪市と同じ「06」だ。「もともと、大阪の一部だったんとちゃうの」。そんな声も聞こえてきそうだが、本当の理由は何だろう。気になって調べてみた。(立石知義)

企業が自費で電柱

大阪から尼崎に自前の電話線を引いた尼崎紡績の本社(尼崎市立歴史博物館提供)
大阪から尼崎に自前の電話線を引いた尼崎紡績の本社(尼崎市立歴史博物館提供)
手動で電話交換作業が行われていた明治後期の尼崎郵便局電話交換室(尼崎市立歴史博物館提供)
手動で電話交換作業が行われていた明治後期の尼崎郵便局電話交換室(尼崎市立歴史博物館提供)
尼崎紡績の本社事務所だった建物は現在、ユニチカ記念館(一般公開休止中)になっている(尼崎市で)
尼崎紡績の本社事務所だった建物は現在、ユニチカ記念館(一般公開休止中)になっている(尼崎市で)

 「尼崎市の電話市外局番が大阪市と同じ06になった理由」――。昨年9月、国立国会図書館関西館(京都府精華町)が、全国の図書館と共同で構築している検索データベース事業の公式ツイッターで、市外局番「06」の理由を解説する参照ページを挙げて投稿すると、リツイート(転載)が相次いだ。関西館の担当者は「数年前にも話題になり、2015年10、11月には、データベースの解説ページ閲覧数が全国4位になったこともある。関心が高い情報のひとつ」と明かす。

 その真相は、約130年前の明治期に遡る。

 紡績産業が日本経済を支えていた1889年、尼崎に「尼崎紡績」(現ユニチカ)が設立された。事業展開には、商都・大阪の取引先との連絡が欠かせない。でも、大阪市内にある電話回線が、尼崎にはない。毎日、人を大阪に行かせるのは、時間も手間もかかる。

 ないものは作ればええやないか――。「アマ」の商売人の魂に火がついたのだろう。尼崎紡績は1893年、大阪市内から本社まで13キロにわたって、自費で電柱を建て、電話線を架設。大阪電話交換局に寄付して電話を使えるようにした。ユニチカの社史には、「連絡は極めて恵まれることとなった」と記されている。

大阪管内編入訴え

 他のアマの事業者も、1本しかない尼崎紡績の貴重な電話回線に目をつけた。空いてる時間でええから、使わせて。製紙会社や他の紡績会社、銀行、精米業を営む豪商らが、厚かましくもたくましい商売根性で回線を借り、大阪との連絡を密にして稼いだという。

 尼崎に電話局ができてからも、商売人たちが連絡を取るのは大阪の取引先が大半だった。戦後すぐの頃、尼崎からの1日約1万件の市外通話先のうち、大阪が約6500件を占めていた。

 ちょっとでも電話代を安くできへんか。尼崎市と市議会、尼崎商工会議所は1953年、日本電信電話公社(現NTT)に対し、尼崎全域を大阪電話局管内に編入するよう陳情。しかし、そうやすやすと首を縦には振ってくれない。公社側は、電話局再編に巨額の費用がかかることを理由に、当時の価格で2億2600万円分の「電信電話債券引き受け」を条件に提示した。

要求の2億円収集

 損して得取れ――。尼崎商工会議所などは電話利用者、新規申込者、地元企業に協力を依頼。見事、要求額を集めてみせ、1954年に尼崎市は大阪電話局管内に編入され、市外局番整備のタイミングで大阪市と同じ「06」が割り当てられた。「尼崎商工会議所80年史」によると、大阪市との通話料は1回14円から7円に安くなり、「尼崎の産業経済活動に大きく貢献した」。

 市外局番「06」の背景には、大阪のあきんどに負けない尼崎の商魂があった。尼崎市立歴史博物館の史料担当、西村豪さん(46)は「うちにも『なぜ06なのか』と、よく問い合わせがある。尼崎は何かにつけて大阪に近く、市外局番まで一緒にしてしまったところがおもしろい」と話す。

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使い方
1842513 0 社会 2021/02/15 05:28:00 2021/02/15 05:36:27 2021/02/15 05:36:27 1900年に建設された尼崎紡績の本社事務所(現ユニチカ記念館)(尼崎市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210214-OYT1I50042-T.jpg?type=thumbnail

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