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「代わりばんこが当たり前」の社会、無理に最適を狙わないという発想…コロナ時代の日本

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 新型コロナウイルスの感染が拡大したこの1年、「密を避けましょう」という標語を駅や小売店で見かけることが日常となった。「密」は人が密集したり、駅などで歩行が滞ったりして生まれる物理現象だ。それならば、車などの渋滞を避ける処方箋は密の対策にも通じるのではないか。
 「渋滞学」を15年ほど前から提唱している東大先端科学技術研究センターの西成活裕教授は、渋滞を招く心理面にも踏み込み、密対策を考察する。密や渋滞は単なる物理現象ではなく、善意のコミュニケーションによって解消が可能という。適度で快適な距離をどうしたら保つことができるのか。ウィズコロナの社会のありようを聞いた。 (編集委員 阿部文彦)

群集マネジメントの手法で「3密」を避ける

 新型コロナウイルスの感染拡大により、密閉、密集、密接の「3密」を避けるのが、社会の新たなルールとなりました。推奨されているのがソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保です。距離にして2メートルほどですね。しかし、雑踏を歩いている時や電車などの公共空間で、左右前後が2メートルを保っているのかを見極めるのは容易ではありません。

 そこで提案したいのが、私が「渋滞学」で研究している群集マネジメントの手法です。人口密度などに基づいて、その空間の快適さを分類する基準を用います。ランクは6段階で、1平方メートルに0・2人以下だったら最高レベルのAに、満員電車並みの3人以上だと最低のFになります。

 コロナ禍でソーシャル・ディスタンスを保つには、Aレベルの人口密度で制御すべきでしょう。これは実は、人同士の間隔が平均的に2メートルぐらいになっている状態です。そうすると、飲食店やイベントは店舗や会場の広さから適切な人数が計算できます。

 群集マネジメントの専門家の間では、常識となっている手法ですが、残念ながら、政府のコロナ対策でこれまで、議論された様子はありません。

 一律の自粛に比べてこの基準が優れているのは、感染対策と経済活動を現状より両立しやすいことです。

 例えば、20平方メートルの居酒屋があるとします。店内の空間をAレベルにするには、お客は4人までですが、〈1〉仕切りを付ける〈2〉入り口と出口を分ける〈3〉換気を徹底する――などの対策を講じて客を増やすといった柔軟な対応が可能になります。

 密を避けるには、人の歩く動線を一方通行にする、あるいは、人を時間的、空間的に分散させるという方法も有効です。

 人の流れを誘導する工夫も必要です。「カーナビのジレンマ」と私は呼んでいるのですが、「この道路が空いている」という情報がカーナビに流れると、皆がそちらに向かい、逆に混み合ってしまうことがあります。渋滞が生じる時期や時間帯には、「このエリアの車はこちらへ」などと多様かつ精緻せいちな情報で分散させて、「密」を消す必要があります。車同士の駆け引きを踏まえたゲーム理論を応用できれば、渋滞解消に新たな知見が加わると思います。

趣味はオペラ鑑賞とアリアを歌うこと。「私はにぎわいという言葉が好きなんです。適度な混雑はやっぱり楽しい。いかに安全に外で遊べるのかに知恵を絞りたい」(東京都目黒区の東大先端科学技術研究センターで)=鈴木竜三撮影
趣味はオペラ鑑賞とアリアを歌うこと。「私はにぎわいという言葉が好きなんです。適度な混雑はやっぱり楽しい。いかに安全に外で遊べるのかに知恵を絞りたい」(東京都目黒区の東大先端科学技術研究センターで)=鈴木竜三撮影

車の流れがかみ合えば渋滞緩和。イベントも譲り合う心が大事

 コロナ禍後、利他的な行為が多く見られるようになりました。喜ばしいことです。

 例えば、トラックや宅配、倉庫などの物流業界。人の流れが止まり、巣ごもり需要が拡大したことで物流が一気に増えました。もともと人手不足が深刻だったため、迅速な対応を迫られました。そこで、共同で配送したり、物品を中継する倉庫を他社に貸したりと、様々な方法で各企業が協力を始めたのです。

 昨夏には、大手コンビニエンスストア3社が同じトラックを使って、商品を共同配送する実証実験に取り組みました。過疎地域での実用化を目指しています。日本の小売企業は協調すべき分野でも競争し、ともに消耗してきました。商品やサービスで競争すればいいわけで、利他的な行動で全体を最適化する機運をコロナが後押ししました。

 宅配業界には再配送の問題もあります。住民が家にいないとか、居留守を使うとかで、1回で配達できない割合が高いのです。

 コロナ禍前は15~16%だった再配送率が、緊急事態宣言が出た4月には8・5%にまで下がりました。家にいる機会が多くなったためですが、きちんと受け取る人が増えたのは、「届けてくれてありがとう」という感謝を込めた利他心も貢献したのだと思います。

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使い方
1891984 0 社会 2021/03/07 09:01:00 2021/03/07 09:01:00 2021/03/07 09:01:00 「あすへの考」用、東京大学先端科学技術研究センター、西成活裕氏(東京都目黒区駒場で)=鈴木竜三撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210301-OYT1I50045-T.jpg?type=thumbnail

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