完了しました
神奈川県立川崎図書館は国内最大級の2万冊超の社史コレクションで知られる。堅苦しいイメージもある社史だが、飛び出す絵本のようだったり用紙に凝ったりと、愛社心の表し方は様々。川崎図書館は10年目に入った不定期情報誌「社楽」を通じ、社史のいろんな楽しみ方を提案している。(横浜支局 中谷和義)
袋入り「チキンラーメン」にそっくり…日清食品50年史
「日清食品50年史」は外箱がでこぼこして麺を模した手触り。中身を開くと「カップヌードル」や「チキンラーメン」といったおなじみの食品のイラストが飛び出す。「象印マホービン株式会社100年の歩み」も食卓の風景が立ち上がる。よくみるとイラストの影が象の形になっている。

アイスの「あずきバー」を販売する井村屋は社史の見返しに小豆の皮を練り込んだ。創業100周年記念誌はえんじ色の皮をちりばめた粒あん風、120年記念誌は薄紫のこしあん風で、あんこへのこだわりをアピールする。富山県の北陸銀行や山形県の両羽銀行(現・山形銀行)は地銀らしく地元の和紙を採用している。
市販されない「社史」を集めるカギは?

社史は市販されないのでコレクションには情報収集が欠かせない。川崎図書館は国立国会図書館のデータや新聞・雑誌の記事などで発行の事実をつかむと会社に寄贈を依頼する。コレクション担当で社史に関する著書もある企画情報課長の高田高史さん(51)は「多少ずうずうしくしないと集まらない」と笑う。
館内の社史コーナーは小学校の教室の倍ほどの広さ。高さ1・8メートルの開架式の本棚が14列に並び、産業別に仕分けされた社史を自由に閲覧できる。利用者の多くは自社の社史作りの参考にしたり、特定産業史を調べたりしているが、川崎図書館は「社史を集めていくと日本の文化も見えてくる」(高田さん)との思いから、2012年1月にA4判2ページの「社楽」を ホームページ 上で創刊した。

1月に発行した最新の第89号は、うし年にあわせて牛にゆかりの社史を調べた。牛丼チェーンの吉野家は、牛の顔を綱で取り囲んだマークを「海外に進出したときにオリエンタルな雰囲気をイメージさせるための意匠であった」と解説。牛乳石鹸は「粘り強く前進せよ」という意味の格言「商いは牛のごとく」の精神を乳牛のイラストに託した。
ビール、ワイン製造会社の社史を紹介する「社史
呑
み」を企画
新型コロナウイルスの感染拡大で気楽に飲み歩けなくなっていた昨年6月の第85号は「社史