【独自】復興住宅「マンション」か「戸建て」か…割れる自治体の判断
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スピード重視でたくさん造れる「マンション」か、三陸の住民たちが住み慣れた「戸建て」か――。被災者に自治体が安価な家賃で提供する災害公営住宅(復興住宅)。東日本大震災の被災地では10年かけて約3万戸が整備されたが、どのような住まいを造るかは、各自治体で判断がくっきりと分かれた。(安田信介、上野綾香、高木文一)

津波で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市では、震災から6年余りで計895戸の復興住宅が整備された。すべてマンション型だ。

整備に携わった市の元幹部は「住宅建設に向く平らな市有地が少なかった。仮設住宅の入居者からは早く安定した家に移りたいという要望もあり、多くの戸数を早く整備できるマンション型に決めた」と明かす。
県内最大の復興住宅で、市が整備方針を決めた「県営栃ヶ沢アパート」(301戸)は、9階建てと8階建ての建物で構成。2016年に完成した。入居者の女性(72)は「一人暮らしなのでマンションで十分」と話す。
一方、震災で戸建ての自宅を失い、同アパートに暮らす女性(74)には不満もある。以前は同居していた長女夫婦が同じ階に住んでいるが、毎日は顔を合わせない。「前は『ご飯ですよ』の一声で家族が集まったのに……。近所付き合いも減った。戸建ても選べたらよかったのに」と言う。
復興住宅の入居者は自宅再建が難しい高齢者も多く、住民同士の交流は重要な要素だ。だが、マンション型は他人の目が届きにくく、プライバシーが守られる一方で孤立のリスクもある。