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デマうのみ 重い代償…軽率な投稿、混乱招く[虚実のはざま]第2部 作られる「真相」<5>

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「頭真っ白に」

あおり運転事故を巡る投稿で有罪判決を受けた男性(3月、埼玉県で)
あおり運転事故を巡る投稿で有罪判決を受けた男性(3月、埼玉県で)

 「興味本位でやっただけだった。こんな事件になるとは思いもしなかった」

 埼玉県川越市の男性(54)は読売新聞の取材に対し、そう振り返った。ネット上の真偽不明の情報に踊らされ、刑事責任を問われている身だ。

 2017年10月、男性がネット掲示板を見ると、怒りの声が渦巻いていた。神奈川県の東名高速道で「あおり運転」を受けた夫婦らが死傷した事故を巡り、前日に容疑者が逮捕されていた。ある匿名の投稿が、男性の目に留まった。

 <(容疑者の)親って(北九州市)八幡西区で建設会社社長してるってマジ?>

 男性が、この地名と容疑者の名字などで検索すると、一つの会社が表示された。男性は、会社名などが記載されたサイトのURLとともに書き込んだ。

男性の投稿。URLから表示される会社は全く無関係だった=画像は一部修整しています
男性の投稿。URLから表示される会社は全く無関係だった=画像は一部修整しています

 <これ?違うかな。>

 だが、元の投稿はデマだった。確認もせずに男性が載せた情報は、SNSで拡散してしまう。

 <犯人の親の会社は潰せ><賠償金を払え>。この会社の社長を名指しした書き込みが相次いだ。会社は、容疑者とは何の関係もないにもかかわらず、脅迫めいた電話も殺到し、一時休業に追い込まれた。

 男性は匿名で書き込んでいたが、半年後、警察に自宅を捜索され、「頭が真っ白になった」。名誉毀損(きそん)罪で在宅起訴され、昨年12月、福岡地裁小倉支部で罰金30万円の有罪判決を受けた。

 「犯罪にあたる文言ではない」と主張した男性を、裁判長はこう非難した。「会社に与える影響を十分に考えなかった投稿は、あまりにも浅はかだ」

 男性は控訴したが、社長側から民事訴訟を起こされており、軽率な投稿の代償は重くのしかかる。

 誤った情報を最初に流した人物は、捜査でも特定されていないという。

批判殺到

 悪意がなくても、結果的に大きな混乱を招いてしまう。コロナ禍でも、そんなデマ拡散の「加担者」の存在が浮かび上がった。

 <トイレットペーパーが品薄になる>

 昨年2月下旬、こうしたデマがSNSに投稿されたのをきっかけに、全国で買い占め騒動が起きた。

 ネット上で責任を追及する声が上がり、中国地方の男性に批判が集中した。過去の投稿から個人情報を特定されたためで、勤務先がおわびのコメントを出す事態にまで発展した。

 しかし、男性は発信源ではなかった。先にデマを書き込んでいた人物がおり、男性はうのみにして投稿した一人だった。

 「他の人の情報を確かめずに流してしまったことを反省しています」。男性はSNSで謝罪し、アカウントを削除した。

リスク直視を

 ネット利用者が、偽ニュースとの接触を避けることは困難だ――。

 ヤフーなどのIT企業で作る「セーファーインターネット協会」は、今年3月に公表した偽ニュース対策の中間報告で、そうした認識を示し、情報リテラシー(読み解く能力)向上の重要性を強調した。

 一方で、過去の調査結果から「だまされないと思っている人のほうが拡散しやすい」という傾向も報告された。「リテラシー教育は必要ない」と考える人にどう働きかけるかが、難しい課題に挙げられた。

 コロナ禍で「インフォデミック」という言葉が世界で注目された。インフォメーション(情報)とエピデミック(流行)を合わせた造語で、不確かな情報があふれている状態のことだ。

 中間報告の策定に関わった西田亮介・東京工業大准教授(情報社会学)は、こう指摘する。

 「私たちはあまりにも多くの情報に囲まれ、個人で真偽を確認するのは難しくなる一方だ。誰でも、信じたいものを信じてしまうリスクがある。社会全体で、その事実を直視することから始めるしかない」

 (第2部おわり。喜多俊介、桑原卓志、田中俊之、橋本龍二が担当しました)

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1981083 0 社会 2021/04/13 05:00:00 2021/04/30 16:54:24 2021/04/30 16:54:24 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210425-OYT1I50065-T.jpg?type=thumbnail

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