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罪を犯した人たちが、「過ちを繰り返したくない」と願い、兵庫県内外から訪れる場所が神戸市中央区にある。臨床心理カウンセリングルーム「
「万引きは、ジェットコースターのようなもの。緊張と

JR神戸駅近くの雑居ビルにある研心音の部屋で、中村さんが相談者の女性に優しく語りかけた。女性は、万引きをした罪で刑事裁判を受けており、「盗むことをやめられない。何とかしたい」と研心音の扉をたたいた。心理カウンセリングでは、知能テストや、成育環境などの聞き取りを重ねる。「なぜ罪を犯してしまうのか」を本人に気づかせ、罪と向き合い、自己をコントロールできるよう促していく。
中村さんは「犯罪は、それまでの人生で形成された価値観や癖が、社会に合わない形で表れたもの」と説明。「時間はかかるが、誤った傾向を正していくことが真の更生になる」と話す。
研心音の開設は2011年。心身の悩みや人間関係、子どもの発育などについての相談を受け付けてきたが、次第に、「罪を犯してしまった自分を変えたい」と希望する人たちも訪れるようになった。
自分の娘に性的暴行をはたらいてしまった父親、万引き衝動を抑えられない女性――。話を聞くうちに、この人たちは、社会から取り残されているのではないか、と感じるようになった。「罰することも必要だけれど、司法制度は、動機や背景事情を探り、繰り返させない取り組みにまで手が届いていないのでは」。再犯防止のための心理カウンセリングに力を入れ始めた。
相談者の刑事裁判を担当する弁護士から頼まれ、情状証人として法廷に立つこともある。被告が心理カウンセリングに通い、再犯防止に努めていることが、刑の執行を猶予する理由として判決文に記載される機会も増えた。
「犯罪者を助けるのか」という批判を受けることもある。しかし、「犯した罪について、きちんと反省させることは、被害者のためになる。新たな被害者を生まないことにもつながる」と信念を曲げない。
研心音の開設以来、再犯防止の相談を受けたのは計約70人に上る。中村さんは「過ちを悔やみ、自分の弱さを克服しようともがいている人たちがいる。犯罪者だからと区別せずに、人は変わることができると信じてもらえるよう、支援していきたい」と語る。
問い合わせは研心音(078・955・2331)。