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性被害の[心の傷]、時効後も悲鳴上げる…「今も教壇に立つのはおかしい」<下>

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28年前に被害…「問題提起を」熱意にほだされ

 「性被害は教員と生徒など力関係に差がある時に起きる。被害に気付き、自分を責める段階を抜け出し、相手に声を上げられるようになるのはごく一部の被害者だ」

「性被害を受け、それに気付いた時に『もう遅い』とならないような社会になれば」と語る小竹弁護士
「性被害を受け、それに気付いた時に『もう遅い』とならないような社会になれば」と語る小竹弁護士

 30件以上の性被害の事件を担当してきた小竹広子弁護士(48)は、被害者が声を上げることの難しさをひしひしと感じている。

 東京都の写真家、石田郁子さん(43)は札幌市立中学校に通っていた当時、教員から性暴力を受けたとして、2019年に損害賠償を求めて同市と教員を提訴した。

 1審・東京地裁の判決では、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」が経過したとして敗訴。昨年12月の2審・東京高裁も控訴を棄却したが、判決の中で28年前のわいせつ行為が認定された。

 この訴訟を請け負ったのが小竹弁護士らだ。石田さんから相談を持ちかけられた時、「20年以上前の事案であり勝つことは厳しい。裁判の過程であなたが傷付くことになる」と率直に伝えると、石田さんは「教員が今も教壇に立っているのはおかしい。問題提起をしたい」と語った。

札幌市は28年前のわいせつ事案を認め、当時の教員を懲戒免職処分にした。その上で、被害者の石田さん(右)に謝罪した(今年2月撮影)
札幌市は28年前のわいせつ事案を認め、当時の教員を懲戒免職処分にした。その上で、被害者の石田さん(右)に謝罪した(今年2月撮影)

 石田さんは、訴訟に先立って「証拠」を集めていた。15年の年末、教員と居酒屋で対面し、教員から「(性的な関係を)忘れるわけがありません」「あなたが裁判をおこして、俺は免職になる。もうクビになる」などの言葉を引き出し、録音をしていた。

 訴訟では、この「録音記録」や居酒屋で面会するまでのメールのやり取りなどを証拠として提出し、28年前の行為の認定につなげた。教員は今年1月、懲戒免職となり、同市人事委員会に処分取り消しを求めている。

 小竹弁護士は「私は加害者側の弁護もする。それは加害者が立ち直ることも大事だと考えているからだ」と語る。その上で「時効や除斥期間の経過で何もしなかったら、被害者は泣き寝入りして、加害者は放置されて自分の過ちに気付く機会もない。新たな被害者を生まないためにも裁かれることは大切だ」と強調する。

15年前の「被害届」

 教員から性被害を受けたことを生徒が申し出て、教委が調査に動き、実際に処分に至る事例も各地で出始めている。

 兵庫県では昨年12月、15年前の女子生徒へのわいせつ行為で県立高校の50歳代の男性教員が懲戒免職になった。被害女性が「こういった被害がこれ以上出ないように」と県教委にメールを送ったことがきっかけだった。県教委の担当者は「合意があっても相手は18歳未満であり、わいせつ行為は処分の対象だ」とする。

 山口県でも昨年12月、2013年に中学校時代の教え子で、当時高校生だった女子生徒の体を触ったとして、40歳代の男性教員が懲戒免職になった。この被害者は「被害を受けたのにこのまま黙っているのはどうかと思った」などとして県教委に被害を申告した。県教委は「細かな記憶違いはあったが、教員は事実をおおむね認めた」とする。

「時効」被害者支援とセットで議論を

 性被害に気付いた時点ですでに時効を迎えていた場合、警察などは対応することはできない。被害者としての感情をしまい込んでしまうと、心に大きな負荷がかかり続けることもある。

 国内では、刑事訴訟法で公訴時効については、強制性交罪は10年、強制わいせつ罪は7年と規定。これに対し、海外では、公訴時効の「起算点」が成人になるまでずれ込むところもあり、米国の一部の州では強制性交罪には公訴時効がない。

時効議論も進む法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」(今年4月撮影)
時効議論も進む法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」(今年4月撮影)

 法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」でも、こうしたことを参考に時効のあり方について検討が進む。一方で、時効を延長することで被害者の記憶が変わり、供述の信用性に問題が生じるという慎重な意見も出ている。

 千葉大の後藤弘子教授(刑事法)は「『時効』の延長は被害者の支援とセットで考えるべきテーマだ。支援もないなかでその期間だけを延ばしても、被害者が苦しみ続けるという現状は変わらない。被害者の回復に役立つ時効制度とは何かを第一に考えて、議論が進むことを期待したい」と話す。

 (この連載は、今村知寛、横山潤、朝来野祥子、上野綾香、江原桂都が担当しました)

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2009184 0 社会 2021/04/25 05:00:00 2021/04/25 18:00:43 2021/04/25 18:00:43 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210425-942212-yomt-1-00-view.jpg?type=thumbnail

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