読売新聞オンライン

メニュー

「二重まぶた」「東大卒」精子取引サイト、登録料3万円でドナーに…妻に内緒で登録する自称医師も

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 インターネットを介した精子の個人間取引が広がる中、子をもうけるため第三者の精子を求める女性と、提供者(ドナー)の男性をつなぐマッチングサイトが10以上存在することがわかった。背景には、第三者の精子を使った不妊治療の利用が限られている現状がある。一方、海外の大手民間精子バンクが日本でもPR活動を開始。国内で規制する法律がない中、精子の「モノ化」が進む。(川崎陽子)

精子提供のマッチングサイトの画面。ドナーの写真や学歴などが並ぶ(画像の一部を修整しています)
精子提供のマッチングサイトの画面。ドナーの写真や学歴などが並ぶ(画像の一部を修整しています)

 2018年に開設されたあるマッチングサイトには、ドナーの写真や似顔絵が並び、年齢や血液型、学歴、「二重まぶた」といった外見などの情報が書き込まれている。ドナー登録者は日々増え、約480人に上る。

 サイト運営者によると、ドナーは登録時にサイト側に3万円を支払う。「東大法学部卒」「医師」などと紹介する文句が並び、感染症などの検査をしたとするドナーもいる。しかし、自己申告で真偽は不明だ。

 利用者は、血液型や住んでいる都道府県でドナーを絞りこみ、提供方法も容器でもらって自分で性器に注入するか、性交渉かを選ぶ。交通費などの実費のほか、原則1回1万~2万円程度の謝金をドナーに払う。

 サイト側は「性行為や金銭が目的でないことをドナーの条件にしている。妊活や不妊に悩む女性を少しでもサポートしたい」と強調するが、やりとりには介入しない。

 取引の累計は800件を超え、出産した人もいるという。妻に内緒で2月にドナー登録した大阪府の自称医師(48)は、「自分の血を引く子がたくさん存在したらうれしい」と話す。

 別のサイトでは、人工知能(AI)による自動マッチングを売りにしている。いずれも、医療機関が関わっている形跡はない。

 

海外バンクも

 ドナー登録数1000人超と世界最大の精子バンク「クリオス」が2019年2月、国内に窓口を設け、案内を始めた。1987年に創業し、デンマークの法律で認められたバンクだ。

 同社によると、サイトでドナーの人種や身長体重、瞳や髪の色、職業などを公開。追加料金で、肉声や幼少期の写真を確認できるドナーもいるが、具体的な学歴やIQは非公開だ。利用者はそれらの情報からドナーを選び、特定のドナーを独占する権利を確保できる場合もある。

 感染症や遺伝子疾患などの検査をクリアした精子だけを提供。生まれた子が将来連絡を取れる「身元開示ドナー」も選べる。条件に応じ、販売価格は1本(0・5ミリ・リットル)7000~25万円(送料別)。ドナーに払われる報酬は採取1回につき約6000円で、身元開示の場合は上乗せされる。

 国内でも、ネットで注文すれば1週間程度で、専用容器に入った凍結精子がデンマークか米国から届く。ドナーに日本人はほとんどいないが、既に国内で150人以上が利用した。うち7割は身元開示ドナーを選んだ。

 購入希望者は不妊に悩む夫婦が2~3割、同性カップルが1~2割、未婚女性が5~6割。昨春以降、コロナ禍で、生殖医療目的の渡航ができなくなった不妊夫婦も増えたという。

 夫が無精子症の東京都の30歳代女性は、半年ほど医療機関で匿名の第三者の精子を使った不妊治療を受けたが、3月にクリオスに切り替えた。同社ではドナーの情報が入手できるためだ。夫婦は「望んで迎える命だからこそ、ドナーを知り、将来出生の経緯を子に伝えたい。子はこの選択を理解してくれるはず」と話した。

正規以外の提供安全・透明性を

 中塚幹也・岡山大教授(生殖医学)の話「子を持ちたい同性カップルや選択的シングルマザーは増えているが、医療機関が精子をあっせんする『正規』の仕組みからは排除されている。マッチングサイトなど医療を介さないやりとりは高リスクで利用すべきではないが、やむを得ず利用する人がいることを前提に、安全で透明な提供のあり方を検討すべきだ」

 ◆第三者の精子を使った不妊治療=日本産科婦人科学会のガイドラインに沿って、決められた12医療機関で実施。精子は匿名のボランティアが医療機関に提供する。対象は法的に結婚している夫婦に限られ、同性カップルや非婚で子を産み育てる「選択的シングルマザー」らは受けられない。生まれた子が出生の経緯や遺伝上の親を知る「出自を知る権利」が議論になり、匿名性が保たれない懸念が出てきたため、精子を提供するドナーは減っており、患者の受け入れを休止する医療機関が相次ぐ。

無断転載・複製を禁じます
2092315 0 社会 2021/06/01 13:57:00 2021/06/03 12:17:58 2021/06/03 12:17:58 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210601-OYT1I50082-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)