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再発防止や真相究明などを訴えて活動する事件・事故の遺族や被害者が、

事実無根
「勝手な思い込みから脅迫されて怖い」。池田小事件のある遺族は、恐怖心をあらわにする。
2019年、高知県内の小学校講師だった男(43)が、遺族を名指しして「先生いじめを繰り返すようなら、制裁を加える」などと記した手紙を池田小に送りつけたとして、昨年、脅迫容疑などで逮捕された。
池田小の犠牲者の家族らは、これまで講演会などで学校の安全対策強化などを訴え続けてきた。しかし、男は「先生を批判していると知り、怒りが湧いた」として、事実無根の一方的な言い分を書き連ねていた。
男はほかにも、東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小の児童の遺族にも脅迫文を送付。今年3月、これらを含む8件の裁判で、仙台地裁は男に有罪判決を言い渡し「(遺族は)同じようなことが起こらぬよう活動をしていたが、理不尽にも被害に遭った。精神的苦痛は察するに余りある」と指摘した。
深い傷
ネットやSNS上での中傷被害も相次ぐ。
「そんなところで泳いでいた方が悪い」「スクリューならミンチだろう」
ニュースサイトへの相次ぐ書き込みを見て、事故で息子を失った母親は深く傷ついた。
福島県会津若松市の猪苗代湖で昨年9月、モーターボートに巻き込まれた4人が死傷した事故では、小学3年の豊田
母親らは昨年12月、事故の真相究明と情報提供を求めてサイトを開設したが、「全ての責任をボートに押しつけようとしている」などのメールも送られてきた。母親は「外を歩くだけでも怖くなり、活動をやめようか悩んだ」と明かし、悪質な書き込みに対し、法的措置も検討している。
世論動かす
再発防止などを願う被害者の家族らの活動は、制度や法の改正につながることも少なくない。京都府亀岡市で12年、集団登校の列に車が突っ込み10人が死傷した事故では、無謀運転への厳罰を求める署名活動が、14年の自動車運転死傷行為処罰法施行につながった。
諸沢英道・常磐大元学長(被害者学)は「遺族や被害者らが世論を動かし、様々な制度改正を実現させてきた。活動を萎縮させる卑劣な行為を絶対に許してはならない。警察による摘発強化や厳罰化により、社会全体で守ることが重要だ」としている。
ネット上の被害、対策進む
ネット上などで、匿名で行われる
政府は今年3月に策定した第4次の犯罪被害者等基本計画で、初めてネット上の誹謗中傷対策を明記。中傷被害に関する相談体制を充実させたり、被害防止のための啓発活動を強化したりすることを盛り込んだ。
4月には、改正プロバイダー責任制限法が成立。これまでネット上の匿名の発信者特定には、SNSの運営会社とプロバイダー(接続事業者)のそれぞれに対して裁判手続きを取らなければならなかったが、1回の手続きで開示を求めることができるようになった。