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【独自】特例解禁の看護師派遣、151自治体で計5095人確保

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 新型コロナウイルスのワクチン接種を加速させるため、政府が「コロナ特例」で解禁した看護師の人材派遣が、各地の接種会場で進んでいる。子育てなどを理由に離職した潜在看護師らに呼びかけ、一時的に力を貸してもらうのが狙いで、1000人規模で人材派遣に頼る自治体も。ただ、直接雇用ではないだけに、労務管理などには注意が必要だ。(坂場香織)

■「ミス出さない」

 「3番のブースへどうぞ」「どちらの腕に打たれますか」

ワクチンの接種会場で高齢者を案内する看護師(5月19日、東京都狛江市で)
ワクチンの接種会場で高齢者を案内する看護師(5月19日、東京都狛江市で)

 先月19日、東京都狛江市の接種会場「上和泉地域センター」で看護師の女性(48)が、問診を終えた高齢者を接種ブースに案内していた。看護学校を卒業後、都内の大学病院で勤務していたが、約20年前に出産を機に退職。2年ほど前に約1年間復職したものの勤務条件などが合わず、再離職していた。

 今年3月、「ワクチン接種の人手が足りない中、何もできないのはもどかしい」と、市が委託する人材派遣会社に登録。初出勤のこの日は誘導業務が割り当てられたが、今後は注射や薬液の 充填じゅうてん なども担い、会場全体のまとめ役を務めることもあるという。

 女性は「朝集合して、『この業務をお願いします』と指示があってスタートした。ワクチン接種を成功させるという一心で、みんなが動くことができた」と手応えを感じつつも、「即席のチームだからこそ、ミスを出さないために気になることは必ず声をかけて、連携していきたい」と気を引き締めていた。

■「役立ちたい」

 厚生労働省の調査(5月14日時点)では、全国で少なくとも151市区町村が、5095人の看護師を人材派遣で確保している。

 実はこの春まで、看護師の医療機関への人材派遣は、労働者派遣法上、原則禁止されていた。医療現場では医師や看護師らが一体となって治療にあたる「チーム医療」が重視され、派遣会社に雇われて短期的に働く人材派遣は適さないと考えられているためだ。

 コロナワクチンの接種会場は別の法律で「診療所」扱いとなるため、これまでのルールでは看護師の人材派遣は認められないはずだった。だが、看護師不足の声を受けて、政府は今年4月~来年2月の特例として、ワクチン接種会場への看護師の人材派遣を解禁。この措置を受け、各地の自治体はこぞって派遣看護師を活用している。

 

 人材派遣会社「メディカルワールド」(東京)によると、5月末までに首都圏を中心に約10自治体と契約。「短時間勤務」や「曜日固定」を認めるなどして、延べ1500人の潜在看護師らを確保した。同社の担当者は「家庭の事情に合わせつつ、社会や地域の役に立ちたいという看護師さんは多い」と話す。

 大阪府八尾市は、集団接種に従事する看護師延べ1000人を人材派遣会社に委託して集めた。市の担当者は「集団接種では多数の看護師が必要。市が直接雇用するとなると募集や面接などの手続きが煩雑になる。人材派遣会社に看護師を集めてもらうことで、市はワクチンの手配や、個別接種を担う医療機関との調整に専念できる」と説明する。

 女性が働く東京都狛江市も、延べ70人を人材派遣で確保した。

■労務管理に注意

 ただ、雇われた会社(人材派遣会社)と、働く場所(派遣先)が異なる人材派遣の働き方は、一般的に、直接雇用と比べて労務管理などの責任の所在があいまいになりがちだ。また、教育訓練が不十分で労災が起きる危険が高いという懸念もある。

 このため厚労省は、今回の看護師派遣の解禁について、「場所(接種会場)と期間(来年2月まで)を限定したコロナ下での特例」と強調している。その上で同省は、看護師の人材派遣制度を活用する自治体に対し、▽社会保険への加入の有無を確認すること▽管理台帳を作成し、就業日や労働時間、休憩時間などを記録、管理すること▽ワクチンの接種方法などについて事前の研修を受けさせること――などを求めている。

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2125903 0 社会 2021/06/15 15:00:00 2021/06/15 15:24:42 2021/06/15 15:24:42 問診を終えた高齢者を接種ブースに案内する原田美恵さん(19日午後4時15分、東京都狛江市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210615-OYT1I50062-T.jpg?type=thumbnail

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