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第三者のウソに規制なし、「感想」「宣伝」線引きあいまい…[虚実のはざま]第3部 粉飾のカラクリ<5>

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野放し

 モノを売るためのウソがネット上にばらまかれ、人々の選択がゆがめられる。その状況を野放しにしてもいいのか。事態を重く見た国も動き出した。

 「報酬目当てに虚偽や誇大な広告を作成するという動機が生まれやすい」

 消費者庁の伊藤明子長官は、3月3日の記者会見でこう述べた。名指ししたのは、「アフィリエイト」のビジネス。個人が作成したサイトなどを経由して商品が売れれば、実績に応じた報酬が入る仕組みだ。

販売元ではない第三者がネットに掲載した内容。作成者が景品表示法に問われることはない
販売元ではない第三者がネットに掲載した内容。作成者が景品表示法に問われることはない

 同庁は実態調査を実施するとともに、大学教授らで作る検討会を設置し、規制の議論を始めた。

 問題なのは、偽の商品体験談などが書かれても、誰も責任を負わない構図だ。

 景品表示法は、品質や価格について実際より著しく良いと誤認させる表示を禁じている。商品の販売会社が、ウソの効果をうたう広告をネットに掲載すれば、同法違反となる。

 しかし、同法が規制するのは「商品やサービスの供給者」に限られる。つまり販売元ではない第三者は、虚偽の宣伝をしても対象にならないのだ。

汚れ役

 「法律に抵触しないような広告では、見た人に『刺さらない』」

 アフィリエイトで生計を立てる20代の男性は言う。使ったこともない化粧品などの体験談のページを作り、月数十万円を得る。

 販売元も、男性が書いている内容を知っているが、見て見ぬふりをしていると思っている。「彼らも商品が売れればいい。僕らは取り締まり対象にならないので、汚れ役を引き受けている感覚だ」と話した。

 消費者庁は「販売元が言い逃れできないような対策を考えたい」とする。

 しかし、景品表示法で販売元の責任を問うには、報酬を得ている個人との関係性を解明する必要がある。膨大な量の情報を調査するには限界もある。個人でも、商品の効能を宣伝すれば医薬品医療機器法に抵触する可能性はあるが、対象商品は限られている。

 ネット広告の問題に詳しい斎藤健一郎弁護士は「今は誰でも発信できる。時代に合った制度に見直す時期に来ている」と指摘する。

米では禁止

 米国では、第三者も規制の対象になっている。

 米連邦取引委員会(FTC)法は、消費者をだますような発信全般を「欺まん的行為」として禁止する。公正取引委員会OBで、米国の制度を研究する小畑徳彦さんは「日本も米国型を参考にすべきだ」と話す。

 ネットにあふれる情報が、「個人の感想」なのか、「広告」なのか。日本では、線引きがあいまいで判別が難しくなっている。販売元と個人の間でやり取りされる金銭の存在が、外から見えないためだ。

 米FTC法では、販売元が報酬を渡していれば、相手に明示させる必要がある。2016年には、SNSで多数のフォロワー(登録者)がいる50人に対し、デパートがドレスの着用写真を掲載するよう依頼し、報酬の支払いを隠していたとして中止命令を受けた。

 通販サイトで商品を評価するレビューも同様だ。健康食品の販売会社が、他人に高評価を書かせていたとして、不当に得た利益の返還を求められている。

 日本でも、こうした行為は「ステルスマーケティング」と呼ばれるが、法的な規制はない。日本弁護士連合会は17年、「消費者の合理的な選択を阻害する」とし、規制を求める意見書を消費者庁に提出している。

 現状に詳しい池本誠司弁護士は言う。「買わせるウソを生む要因を、根っこから断つ必要がある」

 ここ数年、日本でも急速に広がる情報汚染を、どう食い止めるか。規制を巡る議論に注目が集まる。

 (第3部おわり。喜多俊介、桑原卓志、田中俊之が担当しました)

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2139574 0 社会 2021/06/20 05:00:00 2021/06/20 05:00:00 2021/06/20 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210619-OYT1I50128-T.jpg?type=thumbnail

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