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[スキャナー]別姓 立法府に注文…最高裁 議論停滞 合憲派も不満

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 最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は23日、夫婦同姓を定めた現在の婚姻制度を改めて合憲と結論づけた。決定は、「家族のあり方」を巡るルールは国会が作るべきだとする姿勢を打ち出しながらも、停滞する議論へのいらだちもにじませている。(社会部 安田龍郎)

踏襲

最高裁に入る申立人ら(23日)
最高裁に入る申立人ら(23日)

 大法廷が初めて夫婦同姓を合憲とする判決を言い渡してから5年半余り。その間、選択的夫婦別姓の導入を求める地方議会の議決は100を超え、内閣府が2017年に実施した世論調査でも、導入賛同派が過去最高(42・5%)になった。

 社会情勢の急激な変化により、15年に言い渡された判決は既に正当性を失っているのでないか――。これが今回の裁判で「別姓婚」を求めた男女3組による最高裁への問いかけだった。

 しかし、約50ページに及んだ決定文のうち、11人の裁判官による多数意見はわずか2ページ。「家族の一体感」などを重視し、合憲を導いた15年判決を踏襲していた。

 多数意見は、15年判決後に、就職したり、管理職に就いたりする女性の割合が増えたことに加え、選択的夫婦別姓を望む声の高まりを含めて国民の意識が変化したことは認めながらも、現状では、前回の判決を変更するまでの状況には至っていないと結論付けた。

慎重姿勢

 最高裁は元々、家族を巡る法的紛争への介入には慎重な姿勢を貫いてきた。

 離婚・再婚の増加や生殖補助医療の発達などによって「家族のあり方」が多様化する中、2000年代に入って次々と「初判断」を示したものの、ほとんどは民法の規定に沿って結論を導いている。「家族のあり方は将来の社会像まで見据えた議論と判断が必要で、それこそが国会の役割だという考えがある」(ベテラン民事裁判官)ためだ。

 特に夫婦別姓の問題は、大法廷の初判断から5年半しかたっておらず、裁判所内には「短期間に結論を覆せば、司法が揺らいでいるとみられかねない」との声もある。

 決定では「立法政策がどうあるべきかという問題と、現在の規定が違憲かどうかという司法審査は次元が異なる」とも言及し、最高裁のスタンスを説明した。

 ただ、裁判官の個別意見からは、制度改正に向けた議論が始まらない国会への強い不満も浮かび上がる。

 多数意見に賛同しながらも、補足意見をつけた深山卓也裁判官ら3人は、制度設計は国会に委ねるべきだとする一方、「同姓規定によって不利益を被る女性がさらに増えるなど、今後の事情の変化によっては、規定が違憲と評価されることもあり得る」と指摘した。

 「違憲」をとなえた宮崎裕子裁判官ら4人は、96%の夫婦が夫の姓を選択し、多くの女性が喪失感を味わっていると指摘したり、事実婚を余儀なくされている男女が相当数に上る現状への危機感を打ち出したりして、選択的夫婦別姓の必要性に繰り返し言及している。

先送り

 15年判決は「選択的夫婦別姓に合理性がないと断じるものではない」とした上で、「国会で論じられるべき事柄だ」と、国会での活発な議論を促していた。

 だが、自民党内で本格的な議論が始まったのは今年4月。その議論も早々に中断され、次期衆院選後に先送りされた。深山裁判官らの補足意見は「社会の変化は本来、国会が不断に目を配るべきだ。 真摯しんし な議論を期待する」とも指摘した。

 15年判決でただ一人、「国会の不作為は違法」とした山浦善樹・元判事(現在は弁護士)は、「国会で制度改正に向けた議論が本格化しなければ、違憲判断も現実味を帯びる。決定は、最高裁から国会に対する警鐘だと言えるだろう」と指摘した。

5年半で2回 異例の大法廷

 最高裁の審理は通常、裁判官5人ずつで構成される三つの小法廷で行われている。新たに憲法判断を示す場合や、過去の最高裁判例を変更する場合などには大法廷に回付されるが、年に数件程度。国政選挙ごとに、議員1人当たりの有権者数の是非が問われる「1票の格差」訴訟を除けば、5年半で同じテーマを2回扱うのは極めて異例だ。

 今回の結論が前回と同じ「合憲」だったため、法曹界には「あえて大法廷で判断を示す必要があったのか」といぶかしむ声もあるが、最高裁の実務に詳しい裁判官は、15年判決後も同種裁判が相次ぐ現状を踏まえ、「改めて最高裁の統一判断を示すべきだと考えたのではないか」と指摘する。

 また、今回の決定では元々審理を担当していた第2小法廷と第3小法廷の裁判官が2人ずつ、「違憲」とする個別意見を付けたことが明らかになっており、各小法廷での議論が紛糾し、大法廷で取りまとめることになった可能性もうかがえる。

 裁判でも取り沙汰された選択的夫婦別姓制度の導入は、秋にも予想される衆院選の争点に掲げる政党があるが、そうしたタイミングで大法廷が判断を示したのは、なぜか。

 最高裁では7~8月に4人の判事が定年を迎え、交代後に合議をやり直すことになれば、結論までに長時間を要する恐れもある。別のベテラン裁判官は選挙との関わりを否定した上で、「今が現在の大法廷のメンバーで結論を出す最後のチャンスだった」と分析する。

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2150998 1 社会 2021/06/24 05:00:00 2021/06/24 05:32:05 2021/06/24 05:32:05 最高裁に入廷する原告団(23日午後2時46分、東京都千代田区で)=木田諒一朗撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210623-OYT1I50135-T.jpg?type=thumbnail

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