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夫婦別姓認めず 「期待裏切られた」…特別抗告側 「世論に言及」評価も

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 夫婦同姓は「合憲」――。最高裁大法廷は23日の決定で、別姓婚を求めた男女3組の訴えを退けた。ただ、決定は国会での真剣な議論を求め、一部の裁判官からは現行制度を疑問視する意見も出された。今回の家事審判を申し立てた男女らは、大法廷の判断を残念がりつつも、「世論の高まりを認めてくれた」と前向きに受け止める姿勢もみせた。

決定後、報道陣の質問に答える申立人ら(23日、最高裁前で)=米山要撮影
決定後、報道陣の質問に答える申立人ら(23日、最高裁前で)=米山要撮影

 「残念だ」。家事審判を申し立てた東京都内の事実婚の男女3組はこの日午後3時頃、弁護団のメンバーらとともに最高裁で決定文を受け取った後、報道陣にこう漏らした。

 夫婦同姓を巡っては、2015年12月に最高裁大法廷が「合憲」とする判決を出している。

 今回の家事審判で3組は、「夫婦は夫または妻の姓を称する」と定めた民法750条と、婚姻届に「夫婦が称する姓」の記載を義務づけた戸籍法74条について、両性の本質的平等などを定めた憲法24条に違反していると主張。別姓を記した婚姻届を各自治体に受理させるよう求めたが、1、2審とも「15年判決から家族のあり方が大きく変化したとは言えない」と退けられ、特別抗告していた。

 決定後、申立人らは東京・霞が関で記者会見を開き、40歳代女性は「(違憲判断が出ると考えて)別姓の婚姻届を役所に提出するつもりでいた。期待を裏切られた」と憤慨した様子。一方、別の40歳代女性は、「違憲」と考える裁判官がいたことに触れ、「世論の高まりに言及してくれた。私たちの思いが伝わった」と評価し、「国会での議論に期待したい」と語った。

 弁護団の榊原富士子団長は、「意見を付けた裁判官は憲法違反と明確に認定しており、大変進展している」との受け止めを語った。

 家族のあり方が多様化する中、夫婦の姓を巡って、5年半で2回の判断を示した最高裁大法廷。八木秀次・麗沢大教授(憲法)は「15年判決を踏襲した今回の決定により、夫婦同姓が持つ意義が改めて確認された」と述べた上で、「国会で選択的夫婦別姓を巡る議論を進める際には、家族の姓の消失が招く社会的な混乱などデメリットにも目を向けるべきだ」と指摘した。

 一方、元横浜家裁判事の梶村太市弁護士は、今回の合憲判断を「国会と裁判所の役割の違いを重視しており、結論は妥当だ」と評価しつつも、「多数意見は前回判決を引用しているだけで説得力に欠ける感もある。国会での議論では『同姓か別姓か』の二者択一ではなく、戸籍への旧姓併記などの折衷案の検討も必要ではないか」と語った。

 上川法相は最高裁の決定を受けて記者会見を開き、「最高裁の判断内容も精査した上で、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、引き続き検討を進めたい」と述べた。

職場で公文書で…旧姓使用 広がる

 日本では1898年(明治31年)成立の旧民法で「夫婦同姓」が法制化され、戦後の1947年(昭和22年)に成立した現在の民法でも維持された。ただ、江戸時代の庶民は基本的に名字の使用は許されておらず、明治初期にも太政官指令で夫婦別姓が導入されていたことがあり、同姓が日本の恒久的な制度なわけではない。

 1996年には女性の社会進出を背景に、法制審議会(法相の諮問機関)が「選択的夫婦別姓」の導入を提唱。しかし、自民党から「家族の一体感が損なわれる」などの異論が相次ぎ、改正法案の提出は見送られた。2010年にも民主党政権下で法改正が検討されたが、党内外の反対で頓挫した経緯がある。

 法務省によると、現在も法律で夫婦同姓が規定されているのは日本のみとみられる。欧米や南米諸国、台湾などは「選択的夫婦別姓」を採用。裁判を通じて制度改革が実現した国もある。

 夫婦同姓だったドイツは1993年、連邦憲法裁判所の違憲判断を受け、別姓だけでなく、夫婦の名前をつなげた「結合姓」も選択できるようになった。タイでも2005年、憲法裁判所の判断で夫婦別姓が認められるようになった。

 国内では法改正の議論が停滞する中、日常生活で旧姓使用が可能な場面が拡大している。民間企業や行政機関の「自助努力」が姓の変更に伴う不利益を緩和させている格好で、15年の大法廷判決や今回の決定の根拠になるという皮肉な結果も生じた。

 一般財団法人「労務行政研究所」(東京)が18年、全国の上場企業など440社を対象に実施した調査では、旧姓使用を認めている企業が過去最多の67・5%に上り、四半世紀で5倍超に拡大した。国家公務員は01年に職場内での旧姓使用が始まり、17年から旧姓で公文書が作成できるように。19年には住民票やマイナンバーカード、運転免許証の旧姓併記が可能になった。

 一方、携帯大手3社は「不正利用の防止」などの観点から新規契約を戸籍名に限っている。一部の金融機関も同様の理由で旧姓での口座開設を認めていない。

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2151167 1 社会 2021/06/24 05:00:00 2021/06/24 05:00:00 2021/06/24 05:00:00 判決後、報道陣の質問に答える原告団ら(23日午後3時26分、東京都千代田区で)=米山要撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210624-OYT1I50007-T.jpg?type=thumbnail

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