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沖縄慰霊の日 知事の平和宣言全文

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 太平洋戦争最後の 熾烈(しれつ) な地上戦が行われてから、76年目の6月23日を迎えました。

 荒れ狂う戦火は、20万人余りの尊い命を奪い去り、多くの人々を傷つけ、かけがえのない文化遺産や美しい自然を破壊しました。

 私たちは、想像を絶する悲惨な沖縄戦の記憶を風化させることなく、亡くなられた方々の悲しみや苦しみに思いを寄せ、無念の声を代弁する戦争体験者の証言を後世に語り継ぎ、平和がいかに尊いものかという人類普遍の教訓を胸に刻み、恒久平和の実現を強く求めながら、復興と発展の道を懸命に歩んでまいりました。

 しかしながら、今もなおここ 摩文仁(まぶに) を始め県土の各地には、犠牲になられた方々の御遺骨や多くの不発弾が埋もれており、戦争の傷は (いま) だ癒えることがありません。

 県民の思いに寄り添い、国の責任において一日も早い御遺骨の収集、不発弾の処理を行っていただきたいと思います。

 また、国土面積の約0・6パーセントの沖縄県に米軍専用施設面積の約70・3パーセントが集中し続けていることにより、騒音、環境問題、米軍関係の事件・事故が後を絶たない状況にあります。

 SACO合意から25年が経過し、この間、アジア太平洋地域の安全保障環境が大きく変化し、米軍は部隊の分散化を進めていると承知しております。

 このような中、沖縄県が来年本土復帰50年という大きな節目を迎えるに当たり、日米両政府は、県を含めた積極的な協議の場を作っていただき、辺野古新基地建設が唯一の解決策という考えにとらわれることなく、「新たな在沖米軍の整理・縮小のためのロードマップ」の作成と、目に見える形で沖縄の過重な基地負担の解消を図っていただくことを要望します。

 ここ沖縄は、世界自然遺産登録に向けた取組を進める「奇跡の森やんばる」と呼ばれる希少な動植物が多く生息・生育する地域や、個性豊かな自然あふれる離島地域など、多様性に富む自然環境を有しています。

 未来を担う子どもたち、若者たちに、自然豊かな沖縄、独自の文化が息づく沖縄、平和で真に豊かな世界に誇れる沖縄を託すことが私たちの責務であります。

 一方、世界に目を向けると、依然として地域紛争は絶えることがなく、貧困、飢餓、差別、人権侵害などの多くの問題が存在しています。

 「愛の反対は憎しみではなく無関心です」という言葉があります。世界中の人々が連帯し、多様性や価値観の違いを認め合い、対立や分断ではなく、協力して共に歩み、乗り越えていくことが、今求められています。

 まさに現在、新型コロナウイルス感染症の脅威にさらされている中においては、人々の命と生活を支えるため世界が協力していかなければなりません。

 グローバル化した現代において、平和な社会を創造するためには、近隣諸国との相互理解が欠かせません。私たちは、時間や場所を越え平和への思い、安らかな暮らしへの思いを紡ぎ共に分かち合うことが可能です。困難な状況の今こそ英知を結集し、誰一人取り残すことのない社会の実現に向けて共に歩んでいくことが重要ではないでしょうか。

 かつて沖縄の人々は、長い歴史の中で、祖先への敬い、自然への畏敬の念、他者の痛みに寄り添うチムグクルを育むとともに、近隣諸国との交易を通じて友好関係を結び、独自の文化と平和な社会を築いてきました。

 私たちは、世界の国々をつなぐ架け橋として活躍した先人の「 万国津梁(ばんこくしんりょう) 」の精神を受け継ぎ、沖縄の歴史と風土の中で培われた平和を何よりも大切にする「沖縄のこころ・チムグクル」を世界に発信していかなければなりません。

 そして、戦争を体験した全ての方々の思いに応え、二度と悲劇を繰り返さないため、戦争体験や教訓を次の世代に正しく伝えていくことは、私たちの大切な使命です。

 県民の思いを込め世界の恒久平和の創造に貢献することを目指す沖縄平和賞、平和につながる身近な社会貢献活動に光を当てたちゅらうちなー草の根平和貢献賞などにより、平和のバトンは、様々な活動をとおして人々の手から手へ託されながら未来につながっていきます。

 また、沖縄と同様、悲惨な戦争体験などを持つアジア諸国の若者と沖縄の若者が共に学ぶことで、国籍や文化の違いを超えてつながり、培った平和への思いを共有し、遠く離れていても、「平和への架け橋」となるネットワークを築いております。

 私たちは、沖縄から世界へ平和の輪がつながっていくことを目指し、核兵器の廃絶、戦争の放棄、恒久平和の確立のため不断の努力を続けてまいります。

 くぬ地球(みふし)ぬ上(うぃー)から有(あ)る丈(うっさ)ぬ戦争(いくさ)、無(ねー)らんなすくとぅ。

 一人一人(ちゅいなーちゅいなー)が弥勒世(みるくゆー=平和)願(にが)いる心気(しんち=心持ち)繋(ちな)じ行(い)ちゅるくとぅ。

 食料分配(かみむんゆらー)てぃ、希望(にげーかない)とぅ信頼(たゆいがなさ)育(すだ)てぃてぃ、笑顔(われーがう)んかい囲(かく)まってぃ一生(いちぐ)とぅじみ=遂げる=らりーるくとぅ。

 うぬ為(たみ)に必死(ぬちかじ)り努力(はま)てぃ私達(わったー)から未来(さちじゃち)ぬ子供達(わらびんちゃー)んかい繋(ちな)じ行(い)ちゃびらな。

 Let us free this planet from all battles and wars By connecting the hearts of all those who wish for peace Let us always live together with smiles By sharing food, fostering hope and trust among nations It is time to show our “Bankoku Shinryo” spirit to the international communities and to pass the baton of “Chimugukuru” to our children, and future generations!

 本日、慰霊の日に当たり、犠牲になられた全てのみ (たま) に心から哀悼の誠を (ささ) げるとともに、沖縄戦の実相と教訓を次世代に伝え続け、人類社会の平和と安寧を願い、国際平和の実現に貢献できる「安全・安心で幸福が実感できる島」を目指し、全身全霊で取り組んでいく決意をここに宣言します。

                令和3年6月23日 沖縄県知事 玉城デニー

 (※沖縄の方言と英語の訳)

 地球上からあらゆる戦をなくすこと。

 一人ひとりが平和を願う心をつないでいくこと。

 食料を分かち合い、希望と信頼を育み、笑顔に囲まれて一生を遂げられること。

 そのための努力を私たちから未来の子どもたちへつなごう。

首相あいさつ全文

 令和3年・沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、沖縄戦において、戦場に (たお) れた 御霊(みたま) 、戦禍に遭われ亡くなられた御霊に、謹んで哀悼の誠を (ささ) げます。

 先の大戦において、沖縄は、 凄惨(せいさん) な地上戦の場となり、罪もない民間人を含め、20万人もの尊い命が失われました。人々の平穏な暮らしは、にわかに戦乱の渦に巻き込まれ、この地の誇る美しい自然、豊かな文化も、情け容赦なく破壊されました。多くの子供たちの命が奪われた対馬丸事件のような耐えがたい出来事もありました。

 沖縄戦から76年を迎えた今、私たちが享受している平和と繁栄は、犠牲となった尊い命と、沖縄の人々の筆舌に尽くしがたい苦難の歴史の上に築かれたものです。平和の (いしじ) に刻まれた方々の無念、残された方々の言葉では言い尽くせないほどの悲しみと苦しみ、そして沖縄が負った癒えることのない深い傷を、今を生きる私たちは、深く心に刻み、決して忘れてはなりません。

 我が国は、戦後一貫して、平和を重んじる国として、 真摯(しんし) に、そしてひたむきに歩んでまいりました。戦争の惨禍を二度と繰り返すことなく、世界の誰もが、平和で、心豊かに暮らせる世の中を実現する。この決然たる信念を貫き、不断の努力を重ねていくことを、改めて、御霊にお誓い申し上げます。

 沖縄の方々には、永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいております。この現状は、何としても変えていかなければなりません。

 この思いを胸に、私は、これまで多くの沖縄の方々と直接お会いし、基地負担について率直なお気持ちを伺い、沖縄のため、具体的な成果をあげるべく、全力を尽くしてまいりました。

 平成28年には、北部訓練場の過半の返還が実現しました。この跡地を含む沖縄島北部及び西表島については、現在、世界自然遺産登録に向けた手続きが進められています。

 また、平成30年に引き渡しがなされた西普天間住宅地区跡地では、今後の跡地利用の先行事例として、高度な医療・研究機能の拡充や地域医療の向上を目指した健康医療拠点の整備が進んでいます。

 引き続き、「できることはすべて行う」との方針の下、沖縄の基地負担の軽減に向け、一つ一つ、確実に結果を出していく決意であります。

 沖縄は、美しい自然に恵まれ、アジアの玄関口に位置するなど、計り知れない優位性、潜在力を有しています。新型コロナウイルスの影響が長引く中、政府としては、感染防止とワクチン接種を徹底して行っています。沖縄が、この困難を乗り越え、昨年完成した那覇空港第2滑走路や、7月末に全面開通することとなった名護東道路なども活用し、21世紀の「 万国津梁(ばんこくしんりょう) 」として世界の架け橋となるよう、私が先頭に立って、皆様とともに、沖縄の振興を進めてまいります。

 来年5月には、沖縄の本土復帰50年という大きな節目を迎えます。沖縄の更なる発展に向け、現行の沖縄振興特別措置法期限後の沖縄振興の在り方について、しっかりと検討を進めてまいります。

 結びに、沖縄の地に眠る御霊に平安を、御遺族の方々には御多幸を、心よりお祈りし、私の 挨拶(あいさつ) といたします。

             令和3年6月23日 内閣総理大臣 菅義偉

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2151147 1 社会 2021/06/24 05:00:00 2021/06/30 17:54:10 2021/06/30 17:54:10

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