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「引きこもり予備軍」の多い男性、認知症進行の要因に…無口な高齢者も「楽しくなる」施設に注目

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 山口県内では、2025年に約9万人が認知症になるといわれている。65歳以上のおよそ5人に1人にあたり、認知症の進行要因のひとつとされる引きこもりへの対策が急務だ。宇部市に「引きこもり高齢者ゼロ」を掲げる介護施設がある。レクリエーションで外出を促すユニークな取り組みが行われている現場を訪ねた。(田中誠也)

遊びも運動も楽しめる宇部市のデイサービス施設
遊びも運動も楽しめる宇部市のデイサービス施設

 昨年12月、カジノをモチーフにしたレクリエーションに特化したデイサービス「SOUTH SUN」が宇部市にオープンした。

 「しっかり遊んで、しっかり運動しましょう!」

南亮平代表
南亮平代表

 ある日の午前9時。フィットネスバイクなどのマシンのそばに将棋や囲碁、マージャンなど様々な「遊び」が用意されたフロアで、南亮平代表(34)が高齢者に声を掛ける。うなずく高齢者たちの表情は楽しそうだ。

 南代表によると、デイサービス利用者は全国的に女性が多数を占める傾向がある。男性は出たがらず、「引きこもり予備軍」が多いという。このため、この施設のレクリエーションは、男性の外出意欲を引き出せるように考えた。現在、1日平均5、6人が利用している。

 朝の体操が終わると、無口な男性(80)が楽しそうにマージャン台に向かった。認知症が進み、施設での記憶は帰宅するとなくなるという。妻(78)は「帰宅後の表情はいつも柔らかい。よっぽど楽しいのでしょうね」と話す。

 妻によると、男性は退職後、認知症が進むと外出をためらうようになった。妻も心配で外出しない日々が続いた。生活を変えようと、施設を何軒か見学したが、夫は行きたがらなかった。しかし、南代表の施設を訪れると、機嫌が良くなった。妻は「夫が行きたいと思ってくれるサービスが見つかってよかった。私も自分の時間が作れている」と喜ぶ。

 南代表は「明日も行きたくなる施設を目指す。高齢者の社会進出の一歩になり、家族の生活の向上にもつなげたい」と意気込む。

 一方、新型コロナウイルス感染拡大が、貴重な高齢者の外出機会を奪っている。

 認知症介護研究・研修仙台センター(仙台市)が昨年、認知症の人や家族らが集う「認知症カフェ」への新型コロナの影響について全国調査を行ったところ、緊急事態宣言発令中に開催したカフェは6%で、多くは休止を余儀なくされた。

 「認知機能の低下があった」「外出先を失い、引きこもり傾向になった」「家族関係が悪化し、家族が疲弊している」との事例が判明。外出自粛が深刻な影響をもたらしている実態が浮かび上がった。

 認知症の人と家族の会県支部代表世話人の川井元晴・山口大大学院教授(神経・筋難病治療学講座)によると、県内でも公共施設を利用するカフェの多くが休止を強いられたという。

 川井教授は「外出や会話の機会が減ると脳への刺激が減り、認知機能が低下する」と指摘。「オンラインでつながりを保つ若者は多いが、高齢者には苦手な傾向がある。感染防止対策を徹底したうえで、人と会える場を設けていく必要があるのではないか」と話している。

医師に相談、県が支援制度

 県は2年前、高齢者やその家族が、もの忘れや認知症について気軽に医師へ相談できるように、「オレンジドクター制度」を導入した。適切な医療や介護サービスの早期提供につなげたい考えだ。

オレンジドクターの登録プレート
オレンジドクターの登録プレート

 相談対応できる医師をオレンジドクターとして登録しており、7月1日現在、271人。さらに、診療支援も行える医師(プレミアム・オレンジドクター)は6月18日現在、79人を登録している。

 近年は、働き盛り世代で発症する若年性認知症への支援も強化。有病者数は約400人と見込まれ、認知症でも希望を持って暮らし続けられる地域づくりに取り組んでいる。

 問い合わせは県長寿社会課(083・933・2788)へ。

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2182572 0 社会 2021/07/06 10:33:00 2021/07/06 10:33:00 2021/07/06 10:33:00 遊びも運動も楽しめるデイサービス施設(宇部市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210705-OYT1I50064-T.jpg?type=thumbnail

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