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クマは捕獲されたが、襲われた父親は見つからず…事故防ぐために息子は「生態」学ぶ

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 北海道内でクマによる人的被害が相次ぐ中、昨春に父親がクマに襲われて帰らぬ人になった小樽市の会社員酒井隆行さん(47)が、クマの生態や被害を防ぐための知識について発信する活動を始めた。酒井さんは、自らの悲しい過去を振り返るとともに、「クマと人間の事故を減らしたい」との思いを強くしている。(中薗あずさ、牟田口輝)

リュック血だらけ

 「お父さんの姿が見当たらない」。昨年5月15日夕、札幌市にいた酒井さんは、妹から父・清勝さん(当時71歳)が行方不明になったことを知らされ、古平町の実家に急行した。

父・清勝さんの長靴を手に、思い出を語る酒井さん。長靴にはクマにかまれたとみられる痕が残る(6月27日、北海道古平町で)
父・清勝さんの長靴を手に、思い出を語る酒井さん。長靴にはクマにかまれたとみられる痕が残る(6月27日、北海道古平町で)

 実家の机には、「昼からタケノコ」と記したメモが残され、裏山で清勝さんの軽トラックを発見。夜まで町や警察、消防がヘリコプターなどで捜索したが、父の姿は見つからなかった。

 翌日、実家から約500メートル離れた山中で、清勝さんの血だらけのリュックサックや皮膚の一部が相次いで見つかり、近くにクマとみられる足跡やフンがあった。その後、町が仕掛けたわなでクマが捕獲されたが、清勝さんは戻らなかった。

ヒグマ注意期間

 酒井さんは、悲しみに暮れながらも、クマについて学び始めるようになった。「もっと知っていれば、事故は防げたかもしれない」と思ったからだ。クマの研究などを行っている道立総合研究機構に足を運び、生態や行政の対策などを調べた。

 その中で、道が毎年春と秋に「ヒグマ注意特別期間」を設け、警戒を呼びかけていることを知った。この時期のクマは、冬眠前後で餌を求めて活発に動き回る一方、人間は山菜などを採りに山に入る機会が増える。清勝さんが被害にあったのも、まさに期間中だった。

 父の死まで、クマを身近に考えたことはなかったが、「二度と血と涙が流れるような事故は起きてほしくない」。被害を防ぐ方策を広く知ってもらいたいと考えるようになった。

SNSで動画配信

 今年6月、クマについて情報発信する動画「くまのわ喫茶室」をSNSなどで始めた。

 「親離れした子グマは生きていける場所を探している。生ゴミなどを放置すると、居着く可能性がある」「人間が住む場所との境界線をはっきりさせ、出合わないようにするため、山と集落との間などの草刈りは効果的だ」

 学びを重ねていく中で知り合ったハンターや、対策に取り組む団体のメンバーたちを招き、様々な情報を伝えている。被害防止にとどまらず、どうしたら人間と共生できるか、活発な議論を交わしている。

 マスター役を務める酒井さんも、清勝さんの話を交えながら、「美しい北海道を守るためにも、クマの存在は大事だ」と強調する。月2回のペースで開催するくまのわ喫茶室に加え、今後は、道内各地に出向いて啓発活動も考えている。

 清勝さんについて警察は、現場の状況から「獣などに襲われた可能性が高い」として死亡を認定。

 死亡届はこの春受理され、6月中旬、葬儀を行った。

 「遺骨などは戻らず、気持ちの整理はつかないが、父は山から見守ってくれていると思う。活動を通じて、人間にとってもクマにとっても不幸な事故をなくしたい」。酒井さんはそう願っている。

     ◇

 北海道内では、毎年のように山間部を中心にクマに襲われる事故が発生している。道警によると、今年1~6月の死傷者は死者1人を含む7人。統計を取り始めた1962年以降、最多だった64年の8人に迫る勢いだ。

 北海道大の下鶴倫人准教授(獣医学)は、山などでクマに遭遇しないため、〈1〉1人で行動しない〈2〉鈴や声で人間の存在を知らせる〈3〉ゴミを持ち帰る――の3点を訴える。

 クマに遭遇した際は、一定の距離があれば、クマの動きを見ながらゆっくり後ずさりすべきだという。クマは「ブラフチャージ」と呼ばれる威嚇突進行動を見せるが、攻撃を伴わないことが多い。下鶴准教授は「騒いでクマを興奮させないよう、冷静になることが重要だ」と指摘する。

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2182356 0 社会 2021/07/06 09:01:00 2021/07/06 09:01:00 2021/07/06 09:01:00 クマにかまれたとみられる痕が残る清勝さんの長靴を手に、思い出を語る隆行さん(27日午前10時53分、古平町で)=中薗あずさ撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210706-OYT1I50023-T.jpg?type=thumbnail

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